呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
そう言って、二人は顔を見合わせるなり、ほぅと同時にため息をついた。
「貴女もそう?」
続けてハンナに訊くと、彼女は苦笑いを浮かべながらも頷いた。
「そうですねぇ。慣れは怖いと思いますよ? 確かに自然体で好きに振る舞っていいなんて言われるほど嬉しいことはないですけど」
──そんな発言ができる王女様らしからぬベルティーナ様だからこそ、私は大事にお仕えしたいものだと思います。
なんて付け加えて、ハンナが柔らかな笑みを向けると、たちまち頬に熱が上がった。
……家族もいなかった。友達もいなかった。話し相手だっていなかった。孤独な自分が孤独ではなくなったことを改めて悟ったのだ。
確かに王女という身分だが、なぜ彼女たちがそこまでしてくれるのか、やはり分からない。
根は優しいからこそ仕えたくなった、とハンナは言ったが、自分はまったくそうは思わないのだ。しかし、自分が本当にこんなに幸せな気持ちを持っていいものか……。
そう思った途端、胸元の紋様がひどく熱くなる。
だが、それはほんの一瞬で──ベルティーナは紋様のある胸元に手を当て、深く息を吐いた。
「ベルティーナ様……?」
その様子を見かねたのだろう。ハンナが心配そうに顔を覗き込むので、ベルティーナは慌てて首を振った。
「いいえ、何でもないわ……」
「お庭のお手入れに張り切って疲れちゃったんですかね。それに最近色々ありましたし」
「楽しいのは分かりますけど、ベル様は人間。身体が脆いのです。休憩はちゃんととらないとダメです! さあ、座ってください」
そう言って、双子の猫侍女に無理やり座らされて、ベルティーナは一つため息をこぼした。
幸せだと思った。だからこそ紋様が疼いたのだろうと安直に理解できる。これが積み重なるたびに、自分はいつか魔に墜ちるのだろうか……。
魔に墜ちることは、復讐を目論む自分からしても喜ばしいことではある。
だが、怖くないと言えば嘘になるだろう。こう言ってはハンナに失礼だが……やはり一度目の前で見てしまうと、なおさらそう思うようになってしまった。
ハンナは理性を取り戻し、夜に祝福されたものだが……祝福されなければ、この世界でも生きることができないのだ。
そんな不安がざわめけば、自然と心の縁に翳りゆく。
「貴女もそう?」
続けてハンナに訊くと、彼女は苦笑いを浮かべながらも頷いた。
「そうですねぇ。慣れは怖いと思いますよ? 確かに自然体で好きに振る舞っていいなんて言われるほど嬉しいことはないですけど」
──そんな発言ができる王女様らしからぬベルティーナ様だからこそ、私は大事にお仕えしたいものだと思います。
なんて付け加えて、ハンナが柔らかな笑みを向けると、たちまち頬に熱が上がった。
……家族もいなかった。友達もいなかった。話し相手だっていなかった。孤独な自分が孤独ではなくなったことを改めて悟ったのだ。
確かに王女という身分だが、なぜ彼女たちがそこまでしてくれるのか、やはり分からない。
根は優しいからこそ仕えたくなった、とハンナは言ったが、自分はまったくそうは思わないのだ。しかし、自分が本当にこんなに幸せな気持ちを持っていいものか……。
そう思った途端、胸元の紋様がひどく熱くなる。
だが、それはほんの一瞬で──ベルティーナは紋様のある胸元に手を当て、深く息を吐いた。
「ベルティーナ様……?」
その様子を見かねたのだろう。ハンナが心配そうに顔を覗き込むので、ベルティーナは慌てて首を振った。
「いいえ、何でもないわ……」
「お庭のお手入れに張り切って疲れちゃったんですかね。それに最近色々ありましたし」
「楽しいのは分かりますけど、ベル様は人間。身体が脆いのです。休憩はちゃんととらないとダメです! さあ、座ってください」
そう言って、双子の猫侍女に無理やり座らされて、ベルティーナは一つため息をこぼした。
幸せだと思った。だからこそ紋様が疼いたのだろうと安直に理解できる。これが積み重なるたびに、自分はいつか魔に墜ちるのだろうか……。
魔に墜ちることは、復讐を目論む自分からしても喜ばしいことではある。
だが、怖くないと言えば嘘になるだろう。こう言ってはハンナに失礼だが……やはり一度目の前で見てしまうと、なおさらそう思うようになってしまった。
ハンナは理性を取り戻し、夜に祝福されたものだが……祝福されなければ、この世界でも生きることができないのだ。
そんな不安がざわめけば、自然と心の縁に翳りゆく。