呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
(そもそも、私は婚約者の眼中にない。それに夜に祝福されなければ……)

 ベルティーナはすっかり冷めた胸元を押さえて俯いた。
 この世界で幸せになりたい、憎き母国へ復讐したい。これらは〝あまりに極端〟と、今さらながらに思ったと同時、ベルティーナは自分がなんという傲慢な女かを悟った。

(どちらも取るなんて……やっぱり欲張りなのかしら。だけど……)

 カップに注がれたハーブティーを覗き込むと、ひどく落胆した顔を貼り付けた自分の姿が映って、なおさら気分が滅入ってきた。

「ベルティーナ様? 本当に大丈夫ですか?」

 間近から響いたハンナの声に、我に返ったベルティーナはカップを取りながら首を振った。

「ええ、少し考え事をしていただけよ。大したことじゃないわ」

 そっけない嘘をつき、ベルティーナは目を細めて庭園を見下ろした。
 
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