呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 見た目も何もかも至って普通。別に人間離れした能力など持っていない。それでも、年に一度様子を見に来る魔道士に「年々魔力が強まっている」と言われるが、そんなものはまったく自覚できなかった。

 事実生まれつきのように、胸元に幾何学模様(アラベスク)で描かれた花を象った魔紋らしきものがあるが、それ以外は至って普通の人間と変わらない。

 見た目は何ら変哲も無い、ただの人間と──とはいえ、〝呪い持ち〟ということで周囲には忌まれているのだろう。

 実の親である王とその后は、ベルティーナに会いに来たことは一度もない。
 ……詮ずる所、〝臭いものには蓋をしろ〟という理屈に等しいのだろう。

 略奪と制圧を散々に繰り返したこの国の君主だ。いくら我が子であろうと、呪われた子に情けや愛などないと、ベルティーナはいつの間にかそう思うようになっていた。

 それに、十年前に賢女から伝え聞いた話によれば、自分には弟と妹がいるそうだ。

 王位継承権があるのは男児のみ。顔も知らぬ弟が次の王になるのは想像に容易い。

 同じく顔も知らぬ妹は、自分と同じように他国の王族や貴族と結婚し、この城を出ていくのだろうと想像できる。
 ただ、自分は異界だが……。そう思って、ベルティーナは目を細めた。

 そもそも、男児が生まれた時点で〝第一子など初めから存在しなかった〟という扱いになっているのだろう。

 けれど、ベルティーナはそれを悲しいとも悔しいとも思わなかった。

 この国と王室に抱く感情と言えば、憎悪と呆れくらいしか持ち合わせていない。だからこそ、彼女は翳りの国に嫁ぐことに微塵も抵抗がなかった。

 そんな嫁ぎ先……翳りの国とは、ヴェルメブルク周辺地域で昔から言い伝えられる異界だ。

 人間が住まう世界を表で〝日向〟とするなら、そちらは裏でまさに〝日陰〟。多くの書物の中で〝対〟の世界と綴られている。

 遠い昔、その者たちと人間は同じ世界で生活していたが、価値観の違いから争いが絶えず、彼らは裏側に自分たちの世界〝翳りの国〟を築き、そちらに住まうようになったと言われている。

 その国の住人は人で非ず──魔性の者たち。すなわち、怪物と思われる。

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