呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
思えば、城で普段食べる食事だって自分が今まで食べてきたようなものとそう変わらない。違うと言えば、今までよりもいく分か豪華……というくらいだろうか。
そんなことを考えつつ、市場の景色を横目に歩んでいると、双子の片割れが「それは当たり前ですよ~」なんて間延びした声で答えた。
「だって、私たちの祖先は元々人の住まう世界に住んでいたんですもの。そのときの食の風習は残っています。それに特に美味しい食事は今だって表の世界からどんどんと取り入れているのです」
「それからそれから、魔性の者たちの中には夕刻に人に化けてあちらの世界に遊びに行って、流行を調査する……なんて、お仕事をしている人だっているくらいですから!」
双子の猫侍女たちが嬉々として語る言葉に、ベルティーナは少しばかり驚くものの、すぐに納得した。
人間の世界でも、人間と魔性の者は同じ世界に住まい共存していたと伝わるのだから。
しかし、魔性の者といえば、妖しき悪しき者……という印象から野蛮な印象が強かった。こう言っては失礼だが、実際に翳りの国──ナハトベルグに来るまでは、二世紀も三世紀も遡るほど原始的で野蛮な生活を送っているものだと思い込んでいたもので……。
だが、まさかここまで文明が発達しているなど思うまい。
魔力で動く昇降機がある時点で、下手をすればこちらの方が文明が進んでいるようにさえ窺える節があるほどだ。
ベルティーナは黒砂岩造りの街を横目にそんなことを思いつつ歩んでいた矢先だった。
双子の侍女の片割れが途端に「あっ!」と何か思い立ったように立ち止まった。
「そうだ、ベル様! おやつを食べませんか? 城下に降りたら、コレを食べなきゃ帰れない! ってくらいのイーリスたちのオススメがあるんです!」
「シュネーバルっていうお菓子みたいなパンで!」
依然として双子は嬉々として語るが、ベルティーナはその菓子の名を聞いて眉をひそめた。
──〝雪の玉〟を意味するシュネーバル。確か賢女から伝え聞いたか、本で読んだか記憶は定かではないが、明らかに聞き覚えがあった。
確か、ヴェルメブルクよりももっと南下した国の名産で……。
「ええと……確か、粉糖をたっぷりまぶした球状のパンじゃないの?」
うろ覚えの知識でベルティーナが言うと、「正解ですー!」なんて双子は戯けて笑った。
そんなことを考えつつ、市場の景色を横目に歩んでいると、双子の片割れが「それは当たり前ですよ~」なんて間延びした声で答えた。
「だって、私たちの祖先は元々人の住まう世界に住んでいたんですもの。そのときの食の風習は残っています。それに特に美味しい食事は今だって表の世界からどんどんと取り入れているのです」
「それからそれから、魔性の者たちの中には夕刻に人に化けてあちらの世界に遊びに行って、流行を調査する……なんて、お仕事をしている人だっているくらいですから!」
双子の猫侍女たちが嬉々として語る言葉に、ベルティーナは少しばかり驚くものの、すぐに納得した。
人間の世界でも、人間と魔性の者は同じ世界に住まい共存していたと伝わるのだから。
しかし、魔性の者といえば、妖しき悪しき者……という印象から野蛮な印象が強かった。こう言っては失礼だが、実際に翳りの国──ナハトベルグに来るまでは、二世紀も三世紀も遡るほど原始的で野蛮な生活を送っているものだと思い込んでいたもので……。
だが、まさかここまで文明が発達しているなど思うまい。
魔力で動く昇降機がある時点で、下手をすればこちらの方が文明が進んでいるようにさえ窺える節があるほどだ。
ベルティーナは黒砂岩造りの街を横目にそんなことを思いつつ歩んでいた矢先だった。
双子の侍女の片割れが途端に「あっ!」と何か思い立ったように立ち止まった。
「そうだ、ベル様! おやつを食べませんか? 城下に降りたら、コレを食べなきゃ帰れない! ってくらいのイーリスたちのオススメがあるんです!」
「シュネーバルっていうお菓子みたいなパンで!」
依然として双子は嬉々として語るが、ベルティーナはその菓子の名を聞いて眉をひそめた。
──〝雪の玉〟を意味するシュネーバル。確か賢女から伝え聞いたか、本で読んだか記憶は定かではないが、明らかに聞き覚えがあった。
確か、ヴェルメブルクよりももっと南下した国の名産で……。
「ええと……確か、粉糖をたっぷりまぶした球状のパンじゃないの?」
うろ覚えの知識でベルティーナが言うと、「正解ですー!」なんて双子は戯けて笑った。