呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
その言葉の後だった。突然、ミランは右手の薬指に嵌めた指輪を外し、ベルティーナにそれをそっと手渡した。
「……悪い、ベル。ちょっとこれ預かっててくれ」
ミランは素っ気なく言って指輪を渡すと、「表に出ろ」とイーヴォに冷ややかに告げる。その口ぶりは、まるで命じることに慣れているかのように感じてしまう。
何を考えているか分からない。ひとつも感情が読み取れない……とはいえ、こういった部分を見ると、やはり彼は王子で権力者なのだと思う。
しかし……決闘とは。
ベルティーナは彼の指輪を握ったまま、納屋を出ていく彼の背を唖然と見つめた。
「どういう……ことなの」
そもそもなぜこの指輪を預けたのかも分からない。ベルティーナは指輪を一瞥した後、リーヌに蹴破られた扉の先を唖然と見る。
「翳りの国、ナハトベルグの規則です。どんな悶着であっても、決闘によってすべてを決めます。強き者に従う。それこそが魔性の者に定められた掟です。王族相手でもそれは通じます」
リーヌは静かに説明する。だが、ベルティーナは理解が追いつかなかった。
相手はミランよりも背丈の高い大男だ。体躯だって幾分も巨大、横幅だってあった。どう見たって勝ち目がないと憶測するのは容易い。
「ちょっと待って……それじゃあ!」
それに、暴漢相手に王座をかけているだなんておかしいだろう。ベルティーナが青ざめながら立ち上がった途端だった。まるでこの世のものとは思えない咆哮が二つ、外から劈いた。
慌てて外に出ようとするが、リーヌはすぐにベルティーナの腕を掴み、それを遮る。
「ベル様、危険です。ミランに渡された指輪は、彼の〝魔力を抑制している〟ものです。ミランはこういった輩を何度も相手にしています。ですが、こんなに怒ってるミランは初めて見ました。まあ、抑制器なしでも野豚ごときの小悪党に負けやしないでしょうが」
「魔力を……抑制?」
「ええ。僕もミランとお揃いのものをしていますけど……」
そう言って、リーヌはベルティーナに向けて右手を差し出し、指輪を見せてやんわりとい微笑む。
「僕らって、こう見えて相当な馬鹿力を持つ種族なんです。これがないと日常生活に支障をきたすほど。そんな抑制を外したくらいです。勝ちますよ。それにベル様、ミランを誰だと思ってるのですか?」
「……悪い、ベル。ちょっとこれ預かっててくれ」
ミランは素っ気なく言って指輪を渡すと、「表に出ろ」とイーヴォに冷ややかに告げる。その口ぶりは、まるで命じることに慣れているかのように感じてしまう。
何を考えているか分からない。ひとつも感情が読み取れない……とはいえ、こういった部分を見ると、やはり彼は王子で権力者なのだと思う。
しかし……決闘とは。
ベルティーナは彼の指輪を握ったまま、納屋を出ていく彼の背を唖然と見つめた。
「どういう……ことなの」
そもそもなぜこの指輪を預けたのかも分からない。ベルティーナは指輪を一瞥した後、リーヌに蹴破られた扉の先を唖然と見る。
「翳りの国、ナハトベルグの規則です。どんな悶着であっても、決闘によってすべてを決めます。強き者に従う。それこそが魔性の者に定められた掟です。王族相手でもそれは通じます」
リーヌは静かに説明する。だが、ベルティーナは理解が追いつかなかった。
相手はミランよりも背丈の高い大男だ。体躯だって幾分も巨大、横幅だってあった。どう見たって勝ち目がないと憶測するのは容易い。
「ちょっと待って……それじゃあ!」
それに、暴漢相手に王座をかけているだなんておかしいだろう。ベルティーナが青ざめながら立ち上がった途端だった。まるでこの世のものとは思えない咆哮が二つ、外から劈いた。
慌てて外に出ようとするが、リーヌはすぐにベルティーナの腕を掴み、それを遮る。
「ベル様、危険です。ミランに渡された指輪は、彼の〝魔力を抑制している〟ものです。ミランはこういった輩を何度も相手にしています。ですが、こんなに怒ってるミランは初めて見ました。まあ、抑制器なしでも野豚ごときの小悪党に負けやしないでしょうが」
「魔力を……抑制?」
「ええ。僕もミランとお揃いのものをしていますけど……」
そう言って、リーヌはベルティーナに向けて右手を差し出し、指輪を見せてやんわりとい微笑む。
「僕らって、こう見えて相当な馬鹿力を持つ種族なんです。これがないと日常生活に支障をきたすほど。そんな抑制を外したくらいです。勝ちますよ。それにベル様、ミランを誰だと思ってるのですか?」