呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~

第18話 真実と小指の約束に宿る温もり

 その後、ベルティーナたちは徒歩で城まで帰った。

 さすがに今日は疲れきっていた。それでも、あんなことがあった手前、風呂には入りたいので、戻って早々入浴に。
 しかし、今日ばかりはあまりの疲弊にハンナに髪を洗うのを手伝ってもらった。頼られたのが嬉しかったのだろう、彼女は終始、幸せそうな顔をしていた。

 そうして湯浴みを済ませたときには、すっかり夜が明けていて、窓の外は燦々と明るい日差しが溢れていた。

 ──長い一日だったわ。
 ため息を一つこぼしたベルティーナは、それまでを思い起こす。

 結局、イーヴォというイノシシ男への処遇はどうなったかは不明だ。決闘の勝者であるミランが決め、イーヴォはそれに従うだろうとのことをリーヌは言っていたが……。

 なお、この騒動の引き金となってしまったロートスにおいては、お咎めなしにするよう、ベルティーナはリーヌに言った。
 確かに事の発端は彼女の不注意だっただろうが、ロートスには微塵も非がなかったのだから……。

 ベッドの縁に腰掛けて、ミランから渡されたままの指輪を呆然と見つめつつ、ベルティーナはまた一つ深いため息をこぼした。

 あまりに力強すぎる竜族。魔力抑制のための指輪らしいことから、自分の勘違いと思える節はある。しかし、それでもリーヌが〝お揃い〟だと言った時点で、彼らの関係性はまだ不透明のままだ。

 指輪を見つめたまま、ベルティーナがほぅと一つため息をこぼしたときだった。
 部屋の奥からかさりと物音がした。思わず振り向くと、ミランがベールをくぐって部屋に入ってきた。

 彼の姿は、寝間着らしき軽装で、髪がわずかに濡れている様子から、湯浴みを終えたばかりだと思われる。

「ああ、悪い。寝る前だったか。そういやベルに指輪預けたままだったと思って……」

 いつも通りの素っ気ない口調でそう言って、ミランはベルティーナの前まで歩み寄ってきた。

「その……助けてくれてありがとう」

 ベルティーナは率直に礼を言って指輪を手渡す。
 ミランは「当たり前だ」と口元を綻ばせ、当たり前のようにベルティーナの隣に腰掛けた。そして、そっと彼は手を伸ばし、ベルティーナの髪を優しく撫で始めた。

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