呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
 思ったままを告げると、ミランは黙ったまま頷いた。しかし、その途端、またも胸の紋様に灼熱が灯り、ベルティーナは胸を押さえて蹲った。

「──熱っ!」
「おい、大丈夫か……」

 すぐにミランに心配そうな顔を向けられたが、ベルティーナは彼を見ずに頷いた。

 やはり熱さはほんの一瞬だ。しかし、これは自分が“何かまた満たされた”のだと思い知るもので、妙に羞恥を覚えてしまう。

「多分、ほんの少しだけ私が魔性の者にまた近づいただけよ……」
「それって……」

 何か満たされたのか、と彼が言いたいのだと分かり、羞恥が駆け巡る。ベルティーナは慌てて首を振り、ミランから顔を背けた。

「野暮なことを聞かないでちょうだい。私が邪魔者じゃないって、貴方に嫌われていないって分かっただけ、ほんの少し……ほんの少しだけ安心したのよ」

 取り乱さぬように毅然と言うが、それでも早口だった。その様子が面白かったのだろうか。ミランは、くくと低く喉を鳴らした後、ゆったりと唇を開いた。

「なあ……ベルがナハトベルグに来た翌日、俺が城周辺の案内をするって言って、途中で帰っただろ? あれ、きっとリーヌ絡みの誤解だよな。だから……その、今度はちゃんと二人で出かけたいんだ」

 彼の声は少し居心地悪そうで、だがどこか真剣だった。ミランはまるで少年のようなはにかんだ笑みを浮かべ──そっとベルティーナに小指を差し出した。

「デートしてよ、俺のお姫様」

 その言葉にベルティーナの頬は、ぽっと真っ赤に色づく。

「ええ……私こそ、勝手な誤解をしてごめんなさい。一緒に行きましょう」

 ベルティーナは小さく呟き、ミランの小指に自分の小指をそっと絡めた。

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