呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
第20話 破廉恥なドレスに秘めた羞恥
それから約十分後。
お仕着せのドレスを纏ったままのベルティーナは腕を組み、脱衣所の前で目を細めていた。
「……で、暇ができたからって、ミラン王子が急遽私をお出かけに誘いに来た。そこまではいいわ。だけど」
──入浴まで済ませて、めかし込む必要があるのか? と、呆れ交じりに言った途端、狼と猫、三人の侍女たちはぎょっとした面持ちで一斉にベルティーナに視線を向けた。
「ベル様……畑仕事のまま行くのです?」
さすがにそれはちょっと……と、声を出したのは双子の片割れのどちらか。
「べ、ベルティーナ様。相手は婚約者で殿方ですよ……? 何が起きてもいいようにお肌も綺麗に整えておくことって大事じゃないですか?」
そう言ってハンナはぎょっとした面持ちのまま、ベルティーナをじっと見つめた。
「……何を今さら。逆に聞きたいけど何が起きるというのよ? ほぼ毎朝、私が寝床に入る前に私の部屋に来てるのよ。二人きりで過ごしてることは知ってるわよね?」
ぴしゃりと尤もな事実を言うと、ハンナはモフモフとした狼耳をへたりと下げた。
「ねえ、イーリス、〝とのがた〟と二人、何が起きるの?」
「しっ! 聞いちゃダメ。ロートスって本当お子様なんだから!」
恐らくロートスの方はハンナの言わんとしていることをまだよく分かっていないのだろう。さすがに、これ以上の発言は良くないと思ったのか、ハンナはやれやれと首を振った。
「多分、そう遠くに行くわけでもないでしょうに。貴女が言うようなことにはならないと思うけれど。だから、着替えるだけでいいじゃない?」
そもそも、夕刻に起きたつい数時間前に一度軽く湯浴みを済ませているのだから、面倒にさえ思えてしまう。それに水の無駄遣いだろうとさえ思えてしまうもので。
それできっぱりと拒否できたとベルティーナは思ったものだが……。
ハンナが突然「少し耳を貸してください」なんて言い出すものだから、ベルティーナが仕方なくハンナに近づいた──その途端だった。
ハンナはぎゅっとベルティーナを抱き寄せ、取り押さえたのである。
「ベルティーナ様の無頓着な王女様らしからぬところって私は本当に大好きですが、さすがに今回ばかりは言うことを聞いてくださいよ?」
お仕着せのドレスを纏ったままのベルティーナは腕を組み、脱衣所の前で目を細めていた。
「……で、暇ができたからって、ミラン王子が急遽私をお出かけに誘いに来た。そこまではいいわ。だけど」
──入浴まで済ませて、めかし込む必要があるのか? と、呆れ交じりに言った途端、狼と猫、三人の侍女たちはぎょっとした面持ちで一斉にベルティーナに視線を向けた。
「ベル様……畑仕事のまま行くのです?」
さすがにそれはちょっと……と、声を出したのは双子の片割れのどちらか。
「べ、ベルティーナ様。相手は婚約者で殿方ですよ……? 何が起きてもいいようにお肌も綺麗に整えておくことって大事じゃないですか?」
そう言ってハンナはぎょっとした面持ちのまま、ベルティーナをじっと見つめた。
「……何を今さら。逆に聞きたいけど何が起きるというのよ? ほぼ毎朝、私が寝床に入る前に私の部屋に来てるのよ。二人きりで過ごしてることは知ってるわよね?」
ぴしゃりと尤もな事実を言うと、ハンナはモフモフとした狼耳をへたりと下げた。
「ねえ、イーリス、〝とのがた〟と二人、何が起きるの?」
「しっ! 聞いちゃダメ。ロートスって本当お子様なんだから!」
恐らくロートスの方はハンナの言わんとしていることをまだよく分かっていないのだろう。さすがに、これ以上の発言は良くないと思ったのか、ハンナはやれやれと首を振った。
「多分、そう遠くに行くわけでもないでしょうに。貴女が言うようなことにはならないと思うけれど。だから、着替えるだけでいいじゃない?」
そもそも、夕刻に起きたつい数時間前に一度軽く湯浴みを済ませているのだから、面倒にさえ思えてしまう。それに水の無駄遣いだろうとさえ思えてしまうもので。
それできっぱりと拒否できたとベルティーナは思ったものだが……。
ハンナが突然「少し耳を貸してください」なんて言い出すものだから、ベルティーナが仕方なくハンナに近づいた──その途端だった。
ハンナはぎゅっとベルティーナを抱き寄せ、取り押さえたのである。
「ベルティーナ様の無頓着な王女様らしからぬところって私は本当に大好きですが、さすがに今回ばかりは言うことを聞いてくださいよ?」