呪われし復讐の王女は末永く幸せに闇堕ちします~毒花の王女は翳りに咲く~
第21話 城下の賑わいとあの日の謝罪
ベルティーナとミランは城下の街へ続くプラタナス並木を歩んでいた。
周囲は暗々とした闇に包まれているものの、並木には発光球体がついていることから周囲が仄かに明るく見える。
人間の世界で言えば、夜は静謐に包まれるときだ。だが、正反対の暮らしをするナハトベルグでは、現在が真昼と同じ。人の声や弦楽器の音色と賑やかな音が溢れかえっていた。
小高い丘の上に佇むナハトベルグ城ではあるが、意外にも城下は近い。
それは先日の拉致騒動のときにベルティーナも知ったことではあるが、城まで続く坂道を下ってすぐに大きな通りに面していた。その左右には様々な店が軒を連ねており、そこがナハトベルグの街の一番栄えた場所だと、確か双子の猫侍女は言っていた。
(思えば、あの子たち、この城下の出身で治安は良いと言っていたはずよね。そうは言っていたけれど……まさかあんな事態になるなんて)
ベルティーナは先日の拉致事件のことを思い出し、眉をひそめた。その表情を悟ったのだろうか。隣を歩むミランはぴたりと止まり、神妙そうに首を傾けた。
「ベル、どうかしたか? やっぱり出かけるのは嫌か?」
「いいえ……少し先日のことを思い出しただけよ。私につけてくれた双子たちはこの城下の出身で、ここは治安の良い街だって聞いていたけれど」
なぜあんなことが起きたのか。その旨を訊くと、ミランは相槌を打ちつつ、ゆったりとした歩調で歩み始めた。
「……魔性の者だって人間と同じだ。誰もが良い奴なわけじゃない。人間にひたすら無関心な奴だっていれば、恨めしいと思う奴だっている。ベルを呪った妖精やこの前の小悪党たちが良い例だ。人の数だけ色んな考えの奴がいるのが当然。だからああいう奴らだっているんだ。〝同じ人間〟だろうが戦争を起こしたりするもんだろ?」
「そうね……戦争ばかりやってた国の王女だもの。外のことをあまり知らないとはいえ、なんとなくそういったことって想像できるわ」
ベルティーナは母国を思い出して呆れつつ、さっぱりと答えた。
周囲は暗々とした闇に包まれているものの、並木には発光球体がついていることから周囲が仄かに明るく見える。
人間の世界で言えば、夜は静謐に包まれるときだ。だが、正反対の暮らしをするナハトベルグでは、現在が真昼と同じ。人の声や弦楽器の音色と賑やかな音が溢れかえっていた。
小高い丘の上に佇むナハトベルグ城ではあるが、意外にも城下は近い。
それは先日の拉致騒動のときにベルティーナも知ったことではあるが、城まで続く坂道を下ってすぐに大きな通りに面していた。その左右には様々な店が軒を連ねており、そこがナハトベルグの街の一番栄えた場所だと、確か双子の猫侍女は言っていた。
(思えば、あの子たち、この城下の出身で治安は良いと言っていたはずよね。そうは言っていたけれど……まさかあんな事態になるなんて)
ベルティーナは先日の拉致事件のことを思い出し、眉をひそめた。その表情を悟ったのだろうか。隣を歩むミランはぴたりと止まり、神妙そうに首を傾けた。
「ベル、どうかしたか? やっぱり出かけるのは嫌か?」
「いいえ……少し先日のことを思い出しただけよ。私につけてくれた双子たちはこの城下の出身で、ここは治安の良い街だって聞いていたけれど」
なぜあんなことが起きたのか。その旨を訊くと、ミランは相槌を打ちつつ、ゆったりとした歩調で歩み始めた。
「……魔性の者だって人間と同じだ。誰もが良い奴なわけじゃない。人間にひたすら無関心な奴だっていれば、恨めしいと思う奴だっている。ベルを呪った妖精やこの前の小悪党たちが良い例だ。人の数だけ色んな考えの奴がいるのが当然。だからああいう奴らだっているんだ。〝同じ人間〟だろうが戦争を起こしたりするもんだろ?」
「そうね……戦争ばかりやってた国の王女だもの。外のことをあまり知らないとはいえ、なんとなくそういったことって想像できるわ」
ベルティーナは母国を思い出して呆れつつ、さっぱりと答えた。