秘密のカランコエ〜敏腕ドクターは愛しいママと子どもを二度と離さない〜
「あ! からんこえって、ママのかいしゃとおなじなまえだよ!」
彩花は私の手を握りながら誇らしげに胸を張る。
「そうだね。カランコエは『幸福を告げる花』って意味もあるんだよ」
「しあわせ? あやかもしあわせ!」
無邪気な笑顔に、胸がじんと熱くなった。
その時だった。宗一郎さんは私に目配せをして、ふと真剣な眼差しを向けてきた。
「茉奈……少し時間をもらえるか?」
声色が少し低くなって、心臓が跳ねる。
彼はジャケットの内ポケットから、小さなネイビーのケースを取り出した。
「……渡すなら今日がいいと思って」
そう言って開かれたケースの中には、シンプルで上品なダイヤの輝きがあった。
見覚えのあるその指輪に、私は思わず息が止まる。
「昔、君が残していったもの。過去の思い出になってしまったものを渡すかどうか迷ったが、これを渡すのにも意味があると思った」
「これ……」
私は息を呑んで見つめるしかできなかった。胸の奥が痛いほど熱くなって、視界が滲んでいく。
私が未来を諦め、彼のもとに残してきた象徴。それが今、彼と彩花のおかげで帰ってきた。
「それだけじゃない」
宗一郎さんはもうひとつ、小さな箱を差し出した。中から出てきたのは、リングの中心に花のようなダイヤが埋め込まれたシンプルで可憐なデザインの細い指輪。
「これは彩花と一緒に選んだ結婚指輪だ。『あやかもほしい! おそろいがいい』って言ってな、彩花の分も特注で作ってもらったんだ。……これでは結婚指輪じゃなくなってしまうかもしれないが」
「パパとママと、あやかでおそろい!」
彩花が嬉しそうに笑いながら跳ねる。その無邪気な声に、また涙が溢れそうになる。
今の私にとって、この指輪は私と彼を繋ぎ止めるものではないと思わされる。
宗一郎さんは私の手を取り、深く見つめて言った。
「茉奈……俺と結婚してほしい。これから先の未来を、彩花と一緒に、三人で紡いでいきたい」
これまでに何度も伝えてくれていた言葉が、改めて胸の奥まで真っ直ぐに届いた。
長い年月のすれ違いも、不安や後悔も、この瞬間すべてが報われるようで。
そして、未来永劫この幸せが続くように思えた。
「……はい」
震える声で答えると、彼の瞳が強く光を宿した。
「ありがとう……愛してる」
指輪を薬指にはめてくれた瞬間、温室いっぱいに広がるカランコエの花々が祝福してくれるようにさらさらと揺れた。
その場で彩花が両手を広げて抱きついてくる。
「やったー! だいせいこう〜!」
私たちは顔を見合わせて笑い、彩花を真ん中にしてぎゅっと抱きしめた。
真冬の冷たい風の外とは違って、この温室の中は春のようにあたたかかった。
これからの未来も、きっとこの花のように強く、鮮やかに咲かせていける。そう確信できた。
彩花は私の手を握りながら誇らしげに胸を張る。
「そうだね。カランコエは『幸福を告げる花』って意味もあるんだよ」
「しあわせ? あやかもしあわせ!」
無邪気な笑顔に、胸がじんと熱くなった。
その時だった。宗一郎さんは私に目配せをして、ふと真剣な眼差しを向けてきた。
「茉奈……少し時間をもらえるか?」
声色が少し低くなって、心臓が跳ねる。
彼はジャケットの内ポケットから、小さなネイビーのケースを取り出した。
「……渡すなら今日がいいと思って」
そう言って開かれたケースの中には、シンプルで上品なダイヤの輝きがあった。
見覚えのあるその指輪に、私は思わず息が止まる。
「昔、君が残していったもの。過去の思い出になってしまったものを渡すかどうか迷ったが、これを渡すのにも意味があると思った」
「これ……」
私は息を呑んで見つめるしかできなかった。胸の奥が痛いほど熱くなって、視界が滲んでいく。
私が未来を諦め、彼のもとに残してきた象徴。それが今、彼と彩花のおかげで帰ってきた。
「それだけじゃない」
宗一郎さんはもうひとつ、小さな箱を差し出した。中から出てきたのは、リングの中心に花のようなダイヤが埋め込まれたシンプルで可憐なデザインの細い指輪。
「これは彩花と一緒に選んだ結婚指輪だ。『あやかもほしい! おそろいがいい』って言ってな、彩花の分も特注で作ってもらったんだ。……これでは結婚指輪じゃなくなってしまうかもしれないが」
「パパとママと、あやかでおそろい!」
彩花が嬉しそうに笑いながら跳ねる。その無邪気な声に、また涙が溢れそうになる。
今の私にとって、この指輪は私と彼を繋ぎ止めるものではないと思わされる。
宗一郎さんは私の手を取り、深く見つめて言った。
「茉奈……俺と結婚してほしい。これから先の未来を、彩花と一緒に、三人で紡いでいきたい」
これまでに何度も伝えてくれていた言葉が、改めて胸の奥まで真っ直ぐに届いた。
長い年月のすれ違いも、不安や後悔も、この瞬間すべてが報われるようで。
そして、未来永劫この幸せが続くように思えた。
「……はい」
震える声で答えると、彼の瞳が強く光を宿した。
「ありがとう……愛してる」
指輪を薬指にはめてくれた瞬間、温室いっぱいに広がるカランコエの花々が祝福してくれるようにさらさらと揺れた。
その場で彩花が両手を広げて抱きついてくる。
「やったー! だいせいこう〜!」
私たちは顔を見合わせて笑い、彩花を真ん中にしてぎゅっと抱きしめた。
真冬の冷たい風の外とは違って、この温室の中は春のようにあたたかかった。
これからの未来も、きっとこの花のように強く、鮮やかに咲かせていける。そう確信できた。