副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「それじゃあ、せんせ、さようなら」
「はい、さようなら」
「ありがとうございました」
「えぇ、またね。紬ちゃん」

 先生にバイバイをし、紬と手を繋いでエレベーターに乗り込む。
 高層マンションで乗ったエレベーターよりも随分とのろのろと動くエレベーターで下まで向かうと、紬がふわっとひとつあくびを零した。

「眠い?」
「う〜ん……」

 紬の足がのんびりになり、ついには立ち止まってしまう。
 だっこぉ、と紬にせがまれて、私はフッと一瞬だけ息を止めて紬を抱き上げた。

「ふふ、重くなったねぇ」
「ん〜〜」

 紬の大きな目がとろんと溶けている。

 紬はあまり私に似ていない。
 むしろ今日、彼と再会してますます自分にはあまり似ていないのだと実感した。

(目元とか、慎也さんにそっくり)

 色素が薄い彼の目と、紬の目の色が似ている。
 髪も綺麗な艶のある黒髪だし、笑うと顔がくしゃりとなるところもそっくりだった。

「彼が紬を見たら、驚くだろうなー……」

 そして、絶対に自分の子であると確信するはず。
 だから、この秘密はバレてはいけない。きっと、紬に会いたいと言い出すだろうし、どういうことだと問い詰められるだろうから。
< 15 / 60 >

この作品をシェア

pagetop