副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「彼の邪魔だけは、しちゃいけないもんね」

 そのために、私は彼と別れたのだ。

 これから起業しようとする彼の足枷になりたくなかったから。
 私と紬を、お荷物だと思って欲しくなかったから。

 彼と別れる直前、自分の身体に異変が起きていたことには気付いていた。
 だけど怖くて、慎也さんと別れるまでは産婦人科にも行けなかった。

 ――彼が何も知らないうちに別れなければ。

 そう思って、引き留めようとする彼を無理やり振り切って、私は一方的に関係を切った。
 もう二度と、彼の人生には関わらないと、そう決めて。
 紬と二人だけで生きていくと決めて。

 私には頼れる身内もいない。
 祖父母は私が幼い時にはもう既にいなかったし、父も仕事で多忙でほとんど家には居なかった。
 そうこうしているうちに仕事で体を壊してしまい、母も看病疲れで、二人とも呆気なく私の前から去ってしまった。

 だから、紬の生活を守れるのは私だけだ。

 紬に寂しい思いをさせていることは知っている。それでも生活のためには働かなければならない。
 そう簡単に、家政婦の副業も辞められない……。
< 16 / 60 >

この作品をシェア

pagetop