副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「……承知いたしました。これで確認は終わりです。最後に、サインをお願いできますか」

 彼にタブレットを渡し、サインを促す。
 最後に私のサインも入れたら契約成立だ。

 今後、彼が契約を解除したいと申し出ない限り、毎週火木土の夜八時から十時まで私がこの部屋に来て家事をすることになる。
 同様に鍵も、私が持ったままだ。

 契約という形ではあるものの、これでは過去に付き合っていたときと変わらないような……と、モヤモヤとした気持ちが胸に広がる。

(どうして私なんかを指名したんだろう……)

 私以上に曜日も時間も、融通が利くスタッフがいるのに。
 わざわざ私を――元カノを指名する彼の真意が汲み取れなかった。

「では、今日も料理から始めますね」

 彼からタブレットを受け取り、自分のサインを書き込んだあとは、早速今日の仕事に取り掛かろうと冷蔵庫の中を拝見する。
 食材は前回と同じく自由に使ってもよいとのことで、栄養バランスを考えつつ、明日も食べられそうなメニューをチョイスした。
< 21 / 60 >

この作品をシェア

pagetop