副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「今日も美味いな」
「お粗末様です。これでも、毎日料理はしてるから」
「へぇ。忙しいのに偉いな」
「ちゃんと栄養も考えないと。バランスの悪い食事だと体に悪いし」

 我ながらよく出来てると自画自賛して、生姜焼きや味噌汁に口をつける。

 今日、家を出る前はミートソースパスタを作って紬に食べさせた。野菜も細かく刻んで、お肉もたっぷり入れて、一皿でも十分な栄養素を満たせるように、と思って作ったけれど、できることなら今食べているような食事を紬とゆっくり摂りたい。

 どうしても家政婦の仕事がある日は、夕飯が手抜きになりがちだ。
 今作ったものを持ち帰れたらいいのに、と無意識のうちにため息を零してしまう。
 すると、慎也さんから顔をのぞき込まれた。

「大丈夫か? かなり疲れてるだろ」
「ごめんなさい……。ちょっと、考え事しちゃって……」
「なぁ、波留。そんなに生活が苦しいのか?」

 彼が箸を置き、真剣な目で私を見つめる。
 私は一度水を口に含むと、次の瞬間にはにこりと笑顔を浮かべた。

「全然、苦しくないよ。急にどうして?」
「そんなことないだろう。副業までするくらいだ。何か事情があるんじゃないのか?」

 探るような目で見つめられて、下手に視線をそらせないと、私も彼を見つめ返す。

 きっと、彼なりに心配してくれているのだろう。
 だけど、今はその心配が私を追い詰める。

 もう一度、何もないと伝えて、ぱくぱくと料理を口に運んだ。
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