副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「父親は?」
「……」
「いないのか」

 無言を肯定と捉えたのか、父親の不在までバレてしまう。
 彼はますます怖い顔で私に迫った。

「まさか、養育費すらもらってないのか!?」
「その、妊娠が、発覚する前に、別れてしまって……」

 そう言えば、彼が一瞬言葉を詰まらせる。
 彼は深く息を吐き出すと、ソファーの背もたれに身を沈めた。

「だとしても、普通、認知ぐらいしてもらうものだろう」

 呆れたと言わんばかりの口ぶりだ。
 あまりにも衝撃的だったのか、彼の表情には呆れの他に疲れも滲み出ている。

 だけど、心配もあるのか、こちらを見る目はひどく優しかった。

「まぁ、いろいろ言いたいことはあるが……。一人でよく頑張ったな」

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