副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 ぽんぽんと頭を撫でられて、驚いて彼の方を見る。
 まるで、子どもに言い聞かせるみたいに、「波留はよく頑張ってるよ」と言われて、じわりと涙が滲みそうになった。

「……そんなことないよ。紬には、いっぱい寂しい思いさせちゃってるし」
「だったら、この部屋に連れてくるといい」
「へ……?」
「俺は別に構わない。むしろ、波留の娘なら会ってみたい」

 そんなふうに言われて、涙が引っ込んでしまう。それどころか、内心では冷や汗の海で溺れそうだった。

(慎也さんに合わせたら、二人の子だってバレちゃう……!)

 それだけは絶対にできないと首を振る。
 かなりの人見知りだし、連れて来るのも大変だからと強めに断った。

「そうか。でもいつでも連れてくるといい。かなり部屋も余っているから」

 彼のことだから、本気で紬に遊び部屋だと言って、一部屋丸々開放しそうで怖い。
 私はソファーから立ち上がると、裾を捲ってキッチンへ向かった。

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