副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 相変わらず、端正な顔立ちで惚れ惚れする。

 家政婦サービスを利用するぐらいだから、仕事を終えて疲れているだろうに、彼の表情には一切疲れが滲み出ていなかった。
 それどころかシャツもくたびれることなく糊がきいたままで、ネクタイも歪むことなくきっちり締められている。
 ワックスで固められた髪こそ少し崩れてはいるものの、艶のある黒髪は手入れを怠っていないことがわかった。

 付き合っていた頃と比べてお互い歳を取ってしまったけれど、彼の方は私の目から見てもいい年の重ね方をしていて、思わず見惚れてしまう。

 仕事であることを忘れてぼんやりと見つめていると、少しだけ色素の薄い目がこちらを見ていることに気付いて、慌てて目をそらした。

 ――不躾に見すぎたかもしれない。

 そう思って、あからさまに顔をそらしたら、彼がフッと吹き出した。

「な、なんですか……?」
「いや、昔から変わらないなと思って。そうやって何も言わず、じっと見つめてくるところとか、変わらないよな」

 くしゃりと笑う彼の表情が、過去の彼の姿と重なる。

 懐かしさと、過去に感じた愛おしさや別れた痛みが同時にやってきて、私はまたしても視線をそらした。

「すみません。気にしないでください。それで……最後の確認になりますが、担当は私で大丈夫でしょうか? いろいろと気になるようであれば、担当の変更もできますが……」

 できれば、ぜひ担当変更を願い出てもらいたい。

 お互いに気まずさを抱えたままでは嫌でしょう、と念押しで伝えてみたけれど、彼はニヤリと笑うのみだった。
< 4 / 60 >

この作品をシェア

pagetop