副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
◇
それからの彼は有無を言わさぬ勢いで紬と私を部屋に招き入れた。
どうにか切り抜けようと思ったけれど、そうはさせないと紬の方を先に口説き落としたのだ。
「名前はなんていうの?」
「つむぎ!」
「紬ちゃん。可愛い名前だ」
「ほんとぉ?」
「あぁ、紬ちゃんは何歳?」
「ごさい!」
「好きなものは?」
「えっと……いるかのぬいぐるみと、いちごのケーキと、あとママ!」
「そっか。ケーキは家にないけど、お菓子なら家にあるぞ。遊びに来ないか?」
「いいの?」
ニコニコと笑顔で話す紬に、私はどうにでもなれという気持ちでタクシーに揺られ、彼の部屋に入る。
紬は部屋に入るなり、すごーい! と飛び跳ねて、広い部屋で駆け回っていた。
「紬ちゃん。お菓子あるよ」
「ほんと? たべる!」
「食べさせて大丈夫だよな?」
「……うん」
以前、持たされたものとは違う箱のお菓子を開け、彼が紬にあげている。
どうも紬には警戒心がないのか、それとも血の繋がりゆえに何か感じるものがあるのか、彼を怖がることなく懐いていた。