副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「ごめんなさい。でも、本格的に起業するってなったときに、子どもがいるってなったら、困るかと思って……」
「もしかして、別れ話をしたときにはもう紬がいたのか?」
「まだそのときには病院に行ってなかったけど、なんとなくそんな気はしてたの。だから、確定する前にと思って……」
そういえば、彼がふーっと深く息を吐き出す。彼はくしゃりと前髪を潰すと、表情を引き攣らせた。
「なぁ、波留。俺は、いまでも波留のことが好きだ」
「えっ……」
「俺はずっと波留と別れたくなかったし、別れてからも忘れられなかった。今だってこうして再会できて嬉しいと思っているし、紬にも会えて嬉しいと思っている」
彼が椅子から立ち上がり、わざわざ私の前までやってくる。
彼の顔を見上げた瞬間、大切なものを腕に閉じ込めるように優しく抱き締められた。
「また、やり直したい」
「慎也さん……」
「波留のことも、紬のことも、今度こそ大切にしたい」
柔らかな温もりに包まれて、彼と付き合っていた頃の気持ちを思い出す。
心臓の音が聞こえてしまいそうなほど早鐘を打っていて、恥ずかしいのに、彼の抱擁をすぐには拒めない。
紬を産んでからは、恋なんてしてこなかった。
ただがむしゃらに、紬との生活を守るためには走り続けていた。
だから、こんなふうに抱き締められて、温かさを知ってしまったら戻れなくなる。
私は母なのだ。もう恋に浮かれるような歳でもない。
ひとりの女性としての幸せを追求する前に、母として紬の幸せを守らねば。
「もしかして、別れ話をしたときにはもう紬がいたのか?」
「まだそのときには病院に行ってなかったけど、なんとなくそんな気はしてたの。だから、確定する前にと思って……」
そういえば、彼がふーっと深く息を吐き出す。彼はくしゃりと前髪を潰すと、表情を引き攣らせた。
「なぁ、波留。俺は、いまでも波留のことが好きだ」
「えっ……」
「俺はずっと波留と別れたくなかったし、別れてからも忘れられなかった。今だってこうして再会できて嬉しいと思っているし、紬にも会えて嬉しいと思っている」
彼が椅子から立ち上がり、わざわざ私の前までやってくる。
彼の顔を見上げた瞬間、大切なものを腕に閉じ込めるように優しく抱き締められた。
「また、やり直したい」
「慎也さん……」
「波留のことも、紬のことも、今度こそ大切にしたい」
柔らかな温もりに包まれて、彼と付き合っていた頃の気持ちを思い出す。
心臓の音が聞こえてしまいそうなほど早鐘を打っていて、恥ずかしいのに、彼の抱擁をすぐには拒めない。
紬を産んでからは、恋なんてしてこなかった。
ただがむしゃらに、紬との生活を守るためには走り続けていた。
だから、こんなふうに抱き締められて、温かさを知ってしまったら戻れなくなる。
私は母なのだ。もう恋に浮かれるような歳でもない。
ひとりの女性としての幸せを追求する前に、母として紬の幸せを守らねば。