副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「波留、飲み物はいるか?」
「大丈夫よ。ありがとう」

 こうしていると、まるで家族団欒の時間を過ごす夫婦のようだ。
 近くには紬が眠っていて、傍には彼がいて。
 居心地のよさに麻痺してしまいそうになる。

 幸せってこういうことを言うんだろうな、と思っていると、彼がぽつりと似たようなことを言い出した。

「最近、ずっと仕事で気を張り詰めていたから、こういう時間が幸せに感じる」
「えっ……」
「隣に波留もいて、紬もいて……。やっぱり、俺は二人のことを諦めきれない」

 気付けば彼に抱き締められていて、私も抵抗なく受け入れてしまう。
 そこには紛れもない愛情があって、付き合っていた頃と変わらない熱量で彼のことを愛しく感じていた。

「なぁ、波留。この前言ったこと、前向きに考えてほしい。俺はいまでも波留を愛している。そして、紬ともちゃんと父親として向き合いたい」
「慎也さん……」
「だから……」

 そのとき、隣でもぞもぞと紬が寝返りを打った。
 彼の肩越しに紬と目が合って、ひぅ、と息を呑む。
 紬は、むにゃむにゃと言いながら、体を起こした。

「ママたち、なかよし……?」
「紬……! 慎也さん、離してっ」
「離さない。……紬ちゃんも、おいで」
「うん」
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