副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 傍に寄ってきた紬ごと、彼が私を抱き締める。
 紬は嬉しそうな顔で、私と彼の服をぎゅうっと握った。

「ねぇ、おじさんは、ママのこと、すきなの?」
「うん。大好き。紬ちゃんも、同じだけ大好き」

 そう彼が言えば、紬も「すき!」と叫ぶ。
 絆されてはならないのに離れがたくて、私も二人を抱きしめた。

「……こうするのは今日だけよ」
「なんでぇ?」
「……なんでも」

 私の言葉を聞いて、彼が寂しそうな表情を浮かべる。

 本当はこのまま流されてしまいたい。だけど――。

「ママぁ、おなかすいた」
「はいはい」

 私は紬の母親だから。
 母親らしくあらねばならない。

 紬を抱っこし、ダイニングテーブルの椅子に座らせる。
 高さが合わない紬が座りやすいよう、彼がソファーからクッションを持ってきてくれた。それを横目で見ながら食事を温め直し、紬に食べさせる。

 紬が食べる様子を二人で見届ける間、彼は何度もなにか言いたそうに私を見てきたけれど、最後まで気づかないふりをした。
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