副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
「このシリーズ、今度新作が出るらしいぞ」
「そうなの?」
「あぁ。来月、公開らしい」

 ここ最近、彼と一緒に見続けている洋画だ。アクションサスペンス仕立てではあるけれど、そこにちょっとだけ恋愛要素も加わっていて面白い。
 ぜひ、見に行けたらと思うけれど、紬にはまだ内容的に早いので難しいだろう。
 それでもまたこうして配信されたとき、彼と一緒に見れたらなと思ってしまう。
 そのときまで、彼の傍にいるとは限らないのに。

「なぁ、波留。今度、三人でどこかへ出かけないか?」
「三人で……?」
「さすがに映画を観に行くのは難しいだろうけれど、食事でも」

 そう言って、するりと手を握られる。ダメか、と念押しで聞かれたら、断りづらい。
 それでも悩んでいると、彼が強く手を握った。

「前に俺の店にも連れて行きたいと言っただろう? ぜひ、波留にも紬にも来てほしい」
「で、も……」

 紬と三人でお出かけ。それはもう、家政婦の仕事の範疇を超え、プライベートで会うことになる。
 わかりやすく、デートに誘われているのだ。

 元々、彼のことが嫌いで別れたわけじゃない。むしろ、彼を想って別れたし、今もこうして熱心に口説かれて、心がぐらつかないわけじゃない。
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