副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 彼は私より二つ年上で、同じ大学のサークルで知り合い、大学二年生の頃から社会人一年目の頃まで付き合っていた。
 旅行サークルというイベントばかりのサークルで、私も彼もそこまで積極的に参加していなかったけれど、たまたま飲みの席で近くに座ったことがきっかけで意気投合してからは、彼と頻繁に遊びに出かけるようになったのだ。

 それから付き合うようになって、社会人一年目まではお互いに忙しいながらも時間をとって会っていた。

 だけど、私は彼が大学生の頃から起業したいことを知っていた。
 社会人一年目の冬から本格的に彼が忙しくなり、私自身が彼の足枷になりたくないという一心で、私から別れを告げた。
 今思えば身勝手な理由だったし、彼も別れたくないと言ってくれたけれど、その反対を押し切って、私は彼と別れた。

 それから五年。
 こうして再び出会うまで、彼と顔を合わせたことは一度もなかったけれど、これだけ広い部屋に住み、忙しくしている様子をみれば、さすがの私にだってわかる。

 彼は成功したのだと。
 結果的に、あのとき別れを選択してよかったのだと。

(これだけ広い部屋に住んでるんだもん。お仕事も順調なんだろうなぁ……)

 そんなことを思いながら、私にべったりとくっつき虫をしていた彼を引き剥がし、冷蔵庫の中から取り出したひき肉をボウルで捏ねる。
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