副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 今日のメニューはロールキャベツにする予定だ。
 夏も過ぎ、少し肌寒くなってきたし、温かなスープ系であれば食べやすいだろうと思ってのチョイスだ。

 それに、料理が完成する頃には二十一時を回ってしまう。夜遅くから食べるには、消化のしやすさも大事だろうと思ってロールキャベツにしてみたけれど、はたして彼は喜んでくれるだろうか。

 付き合っていた頃よりも料理の腕が落ちてたら嫌だな、と思いながらもひき肉を捏ね、下準備をしたキャベツで肉ダネを包み、和風ダシで味付けしたスープで煮込む。

 昔、洋風よりも和風のロールキャベツが好きだと言っていたことを思い出して味付けするあたり、私もだいぶ私情に振り回されている。

 よくない傾向だと己を叱咤して、できたばかりのロールキャベツや、煮込んでいる合間に作ったサラダと副菜のきんぴらを出したら、一緒に食べないかと彼から誘われた。

「いえ、私はあくまで雇われの身ですので」
「ならば、一緒に食事をとるというのも追加で」
「うっ……」

 家政婦の仕事に『食事を一緒にとる』という項目はないけれど、有無を言わさぬ圧で見つめられては断りきれない。
 仕方なく空いているダイニングテーブルの椅子に腰掛ければ、彼は満足そうに出来立てのロールキャベツを箸で割った。
 それを一口含み、満足そうに頷く。

「……うん、美味い」
「ありがとうございます……」
「昔、よく作ってくれたよな」

 懐かしいと言って、ぱくぱくと食べてくれる彼の姿に安堵する。
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