副業家政婦の仕事に『元彼社長からの溺愛』は含まれていないはずなのに
 私が在籍しているハートフル急便は、いわゆる副業先だ。
 本業の会社には内緒で週三回、夜の八時から十時まで副業という形でハートフル急便に籍を置いている。
 そのことを彼に告げたところで会社に言いふらすことはないだろうけれど、それでも後ろめたさはあった。

 私がなんとなく言いづらそうにしているのを彼も察したのだろう。慎也さんは、なるほど、と頷きつつも、悪い顔で笑った。

「隠れて副業してるのか」
「そんなはっきり言わなくても」
「で、そうまでして働く理由は? そんなにガッツリお金貯めたいってタイプでもなかっただろ?」
「それはまぁ、そうなんだけど……」

 彼の言うように、私にはこれと言って欲しい物もしたいこともない。
 どちらかといえば仕事はそこそこで、休みの日はゆっくりしたいタイプだ。間違っても、朝から晩まで働きに出たいタイプではない。

 だけど、今はそうしなければならない理由がある。

 それが私にとって第二の秘密であり、最大の秘密なわけだけれど、彼には知られたくなかった。

「別になんでもいいでしょう。ただ、ちょっと頑張りたいと思っただけです」

 話は終わりだと言わんばかりに、彼から食べ終わった皿を受け取り、スポンジで汚れを落としていく。

 それ以上、彼も私が副業している理由について追求する気はないようで、なんだかんだ今日は料理とその片付けだけで二時間を使い切ってしまった。
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