【マンガシナリオ】つづきは白衣を脱いでから~極上心臓外科医の独占欲を煽ったら溺愛されました~
4話 ワンナイトラブの後遺症
〇両親が営む居酒屋ダイニング【来栖】 夜
両親が営むメインの和風居酒屋ダイニング。二階が母屋になっている。
※カウンター5席・テーブル四人掛け×2・二人掛け×4
帝東大学病院の裏手にあり、学校から帰ると毎日手伝いをする愛未
カウンターの内側でグラスを拭きながらぼんやりと物思いにふけっている。
愛未(瑛人さん、帝東医大のお医者様だったなんて……)(今日はどうにか切り抜けたけど、明日もうまく逃げられるかなぁ……)
※瑛人の白衣姿を思い浮かべる
愛未(白衣姿もかっこよかったな)
母「――み。愛未!」
出来上がった料理を手に持ち愛未を呼ぶ母。
ハッと我に返る愛未。
愛未「ごめん、なに?」
母「これ、3番テーブル」「ていうかあんた、疲れてるならもう上がっていいわよ」
心配そうに聞く母。
愛未「ううん、大丈夫」「ラストオーダーの時間まで手伝うよ」
母「そう?」「あまり無理しないでね」
愛未「はいはーい」
笑顔で料理を受け取る。

〇愛未の部屋 深夜
机に向かって黙々と勉強する愛未。
スマホを見るとセブ島の海の待ち受けに三時の時刻が浮かぶ。
同時に瑛人と過ごした夜の情景が蘇る。
愛未モノローグ『もう二度と会わないと思ったのに』『目の前に現れるなんて反則だよ』
頭を抱えてため息を吐く愛未。
愛未「もう寝よう」
大きく伸びをするとベッドにもぐりこむ。

〇帝東病院 循環器病棟スタッフステーション 朝
白衣姿の愛未たち(学生五名)は昨日と同じように循環器病棟のスタッフステーションの壁際に邪魔にならないように立つ。
寝不足とすぐわかる様子の愛未を心配した梨花が話しかける。
梨花「ちょっと愛未」「昨日ちゃんと寝た?」
愛未「寝たよ」「三時間くらいは……」(本当はベッドに入ってからも眠れなかったんだよね)
愛未の隣で乃蒼が心配そうにしている。
指導看護師が現れ、全員が姿勢を正す。
全員「おはようございます。本日も学生五実習に入らせていただきます」「よろしくお願いします」
指導看護師「よろしくお願いします」「では、ひとりずつ今日の行動計画をおねがいします」「まずはあなた」
指名されたのは乃蒼。びくりと肩を震わせる。既に泣きそう。
クリップボードに挟んだ用紙を見ながら指導者の前で口を開く乃蒼。
乃蒼「は、はい」「本日は受け持ち患者さまの情報収取から始めさせていただきます」
愛未モノローグ『学生はこんなふうに今日一日、自分が何を学びたいかを時系列にまとめた行動計画というものを指導者に伝える』『二年生の時よりも、より専門的な知識が必要で……』
指導看護師「そのケアが必要な根拠は?」
威圧的な表情で梨花を見据える指導看護師。
乃蒼「根拠?」「それは……ですね」
あたふたする乃蒼。
その様子をみて全員が凍り付く。
一歩前に出る愛未。徐に口を開く。
愛未「その患者さんは入浴の許可が下りていません。ですのでケアの目的は清潔保持、足浴血行促進、リラックス効果です」「さらに糖尿病の既往がありますので足の状態の観察を行います」
がちがちに緊張しながらも言い切る愛未。
乃蒼は祈るように愛未を見つめている。
指導看護師「あなたの受け持ちは別の患者様でしょう?」「なにを勝手に――」
眉を吊り上げて(でも怒りをこらえている様子の)指導看護師。
愛未「たしかに」「わたしの担当患者さんではありません。ですが」「チームの患者さんの状況を把握し、知識を共有しながら助け合うことも大切だと学びました」
にこりと微笑む愛未。ぐうの音も出ないといった感じの指導者。
そのやり取りをスタッフステーション前の廊下から瑛人が見ている。愛未は気付いていない。
瑛人(……へえ)(やるじゃん)
どこかうれしそうにクスリと笑う瑛人。

〇病棟の廊下 昼
乃蒼と愛未。受け持ち患者の元へ向かうために血圧計と聴診器を手に持って廊下を歩いている。
乃蒼「愛未ちゃん」「さっきは助けてくれてありがとう」
真剣な顔で乃蒼が言う。
愛未「余計じゃなかった?」
乃蒼「ぜんぜん」
フルフルと首を振る乃蒼。
乃蒼「チームって言葉にグッときちゃった」
愛未「もう、やめてよ~」
前から人が歩いてきて愛未は足を止めた。乃蒼も立ち止まる。
乃蒼「愛未ちゃん、どうかした?」
愛未(瑛人さん!)(こんなところで鉢合わせするなんて――‼)
さっと顔を背ける愛未。
瑛人は愛未を真っ直ぐにみつめて近づいてくる。愛未は瑛人の名札を見た。
【医師 芹沢瑛人(せりざわえいと)】と書いてある。
愛未(芹沢瑛人……)(それが瑛人さんのフルネーム)
愛未モノローグ『あの島ではお互いの名前以外明かさなかった……』
同時に瑛人も愛未の胸ポケットに刺繍された名前【来栖愛未】に気付く。
瑛人「愛未」
名前を呼ばれてびくっと肩を震わせる愛未。
瑛人「愛未だよね?」
愛未「ちがいます!」
頭をぶんぶん振る愛未。
キョトンとする乃蒼。
乃蒼「知り合い?」
愛未「しっ、知り合いじゃない‼」(しちゃった(・・・・・)けど、知り合いじゃなんかじゃ……)
必死の愛未の様子を傍観する瑛人。
愛未「失礼します」
瑛人の横をすりぬけて走り出す愛未。
瑛人「ちょ……」
待ってと手を伸ばすが行ってしまう愛未。
取り残された乃蒼は状況が飲みこめないまま瑛人に会釈をする。
乃蒼「失礼します」
通り過ぎる乃蒼。
瑛人「ねえ」「きみ――」
乃蒼の背中に声をかける瑛人。
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