敏腕社長の密やかな溺愛
9.エピローグ
それから数ヶ月後、千明は和弘とともにドイツにいた。
ゼルファリスのレセプションパーティーに参加するためだ。
きらびやかや会場で、千明はドレスに身を包んでいた。
「嬉しそうだな」
千明をエスコートしていた和弘が微笑む。
「だって、本当にルミナークのシステムが搭載されたんですよ? これで事故が減るんだって思ったら嬉しくてっ……!」
会場内に展示されている高級車を眺めながら、千明は目を細めた。
「これから忙しくなる。部署再編もあってバタバタしているだろうが、頑張ってくれ」
「はいっ!」
記者会見の翌日から、ルミナークは大規模な部署の再編成が行われた。広報二課は消え、ただの広報部として、一課と統合された。
何人かが自主的に退職したらしい。課長もその一人だった。斎藤も別の部署へと異動後、一身上の都合で辞めてしまったようだ。
千明は総務に戻ることなく、広報部の一員として仕事をしていた。広報二課にいた頃が嘘のようにスムーズに仕事が出来ている。後遺症のことを同僚たちに告げたため、無理なく働けているのだ。
「今日は現地メディアの取材が二件ありますから、それも頑張りましょうね」
千明が和弘に微笑むと彼はうなずいた。
そして千明の耳にそっと口を寄せる。
「それが終わったら、今日は千明の時間を俺にくれるか?」
「ちょっ……今言うのはズルいですよ」
「ははは。日本にいると母に千明を取られてしまうからつい、な。じゃあ後で改めて誘おう。夜は長いからな」
抱き寄せられ千明の顔がカッと赤くなる。それを見て、和弘は満足そうに笑っていた。
【完】
ゼルファリスのレセプションパーティーに参加するためだ。
きらびやかや会場で、千明はドレスに身を包んでいた。
「嬉しそうだな」
千明をエスコートしていた和弘が微笑む。
「だって、本当にルミナークのシステムが搭載されたんですよ? これで事故が減るんだって思ったら嬉しくてっ……!」
会場内に展示されている高級車を眺めながら、千明は目を細めた。
「これから忙しくなる。部署再編もあってバタバタしているだろうが、頑張ってくれ」
「はいっ!」
記者会見の翌日から、ルミナークは大規模な部署の再編成が行われた。広報二課は消え、ただの広報部として、一課と統合された。
何人かが自主的に退職したらしい。課長もその一人だった。斎藤も別の部署へと異動後、一身上の都合で辞めてしまったようだ。
千明は総務に戻ることなく、広報部の一員として仕事をしていた。広報二課にいた頃が嘘のようにスムーズに仕事が出来ている。後遺症のことを同僚たちに告げたため、無理なく働けているのだ。
「今日は現地メディアの取材が二件ありますから、それも頑張りましょうね」
千明が和弘に微笑むと彼はうなずいた。
そして千明の耳にそっと口を寄せる。
「それが終わったら、今日は千明の時間を俺にくれるか?」
「ちょっ……今言うのはズルいですよ」
「ははは。日本にいると母に千明を取られてしまうからつい、な。じゃあ後で改めて誘おう。夜は長いからな」
抱き寄せられ千明の顔がカッと赤くなる。それを見て、和弘は満足そうに笑っていた。
【完】


