敏腕自衛官パイロットの揺るがぬ愛が強すぎる~偽装婚約したはずが、最愛妻になりました~
 「はい。今日は仕事でブルーインパルスを」
 「どれ、俺の写り具合は?」


 透矢にねだられ、撮影したばかりの写真をカメラの裏画面に表示させたそのとき。


 「アローさーん、今日もとってもカッコよかった!」


 若い女性がスカートをなびかせて近づき、透矢の腕に自分の腕を絡ませた。二十代中頃の目がくりっとしたかわいらしい女性だ。色白の頬をほんのりピンク色に染め、フランス人形みたいに愛らしい。
 彩羽は驚いて半歩下がった。

 (〝アローさん〟?)

 透矢をそう呼んだようだが、聞き違いだろうか。

 (ただのファンじゃなさそうだけど、もしかしたら恋人……?)

 透矢は心なしか表情を曇らせ、彼女が絡ませた腕をそれとなく引きはがそうとしていた。
 公の場だからなのかもしれない。


 「ごめん。今、取り込み中だから」
 「えっ?」


 目に入っていなかったらしく、女性はそこで初めて彩羽を見た。


 「あ、ごめんなさい。ファンの方と交流中だったのね」


 素直に謝り、透矢からパッと離れる。その言い方から、自分はファンとは違うというのが窺えた。透矢への好意が手に取るようにわかる。
 居心地の悪さを感じて彩羽がさらに一歩下がったそのとき、今度は背後から彩羽を呼ぶ男性の声がした。


 「彩羽」


 聞き覚えのある男性の声に彩羽が振り返ろうとするのと、透矢が口を開くのは同時だった。


 「いや、こちらの女性は俺の婚約者」


 ハッとして透矢を見る。たるんだロープで繋がれた首をいきなり強く引っぱれる感覚だった。


 「ちょっとなにを言ってるの? 婚約者なんてどうして? 嘘よね?」


 女性が声を荒げる。彩羽を代弁しているも同然の言葉だった。

 (いきなりなに?)

 わけがわからず疑念いっぱいに透矢を見る。目で〝どういうこと?〟と合図を送るが、それに答えるつもりはなさそうだ。いや、この状況で口に出して答えられないのは彩羽もわかっている。


 「嘘じゃない。パーティーで出会ったんだ」
 「パーティー!?」


 そこーで出会ったのは事実でも婚約者ではない。
 ハラハラしながらふたりを見比べていると、透矢がね?と言いながら彩羽の腕を掴んで隣に立たせる。「ごめん、俺に合わせて」と耳元で囁いた。
 一度ならず二度までも、彼と偽りのカップルになるなんて思いもしていない。目を白黒させる彩羽の視線の先に、元彼の恭平が面喰ったように立っていた。



続きは書籍版でお楽しみください。
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