蒼穹の覇者は、激愛で契約妻と秘密の我が子を逃がさない
◇◇◇
日曜日、バイト先であるカフェ・クレールでテーブルの片付けをしていた玲奈は、客が開きっぱなしにしで帰った雑誌を閉じようとして手を止めた。
観光地を紹介しているそのページには、煌めく水面や、緑豊かな場所で虹色の垂れ幕がはためく景色などが掲載されている。
その他にも、美しい景色を眼下に楽しめるガーデンテラスの写真などもある。
記事を読むと、お盆休みに向けて、滋賀にある琵琶湖周辺の観光スポットを特集しているようだ。
写真映えしそうな観光スポットの他、アクティビティやグルメなども紹介されている。
「綺麗な場所、こんな場所に悠眞さんと一緒に行けたら……」
素敵な景色を目にして、彼と肩を並べて歩く自分の姿を想像した直後ハッとする。
(いくら仲良く暮らしているからって、悠眞さんと私は、恋人でもなんでもないのに)
フルフルと首を振って雑念を追い払った玲奈は、仕事に集中することにした。
そうやっていつも以上に忙しく立ち働いていた玲奈が、勤務時間を終えて帰り支度をしていると、オーナーの妻である早川渚沙が声をかけてきた。
「玲奈ちゃん、これ余りそうだから持って帰る?」
「なんですか?」
持って帰るかと確認しつつも、差し出されたそれは、すでに紙袋に入れられている。
「ほうれん草とベーコンのキッシュよ」
渚沙の言葉に、玲奈は表情を綻ばせた。
「ありがとうございます。悠眞さんちょうど今日帰ってくるから喜びます」
クレールのオーナーで、渚沙の夫でもある早川遥歩は、本場フランスで修行した経験を持つ料理人だ。
本場のフランス料理といっても、格式ばったフレンチレストランではなく、地域に根付いたアットホームな店での修行だったとのことで、この店で出す料理も素朴な味わいのもが多い。
そしてそのどれも美味しくて、玲奈の様子を見にお店を訪れた悠眞も、すっかりこのお店のファンになっている。
その中でも、ほうれん草のキッシュは特にお気に入りだ。
悠眞のことを思って玲奈がうれしそうにしていると、渚沙がニンマリする。
「玲奈ちゃん、旦那さんのこと本当に好きよね」
「そ、そんなことは。……それに、まだ旦那さんではないです」
玲奈が慌てると、渚沙が微笑ましげな眼差しを向けてくるので、なんだか余計に恥ずかしい。
「そんな照れなくてもいいじゃない。玲奈ちゃんの反応見ていれば悠眞さんのこと大好きなのはわかるから、さっさと結婚しちゃえばいいのに」
契約結婚に向けたお試し同棲中というのは色々ややこしいので、渚沙たちには、悠眞との関係は、結婚を考えている同棲中のパートナーと説明してある。
だから渚沙たちは、玲奈と悠眞の間に恋愛感情がなんて思ってもいない。
「そういうのは、悠眞さんの都合もあるから、私一人の気持ちだけじゃ決められないです」
玲奈が言葉を濁すと、渚沙がすかさず目を輝かせる。
「てことは、玲奈ちゃんの気持ちは決まっているってことね」
思わず赤面して黙り込む玲奈を見て、揶揄いすぎたと思ったのか渚沙はクスクス笑いながら、準備していたのとは別の袋にブラウニーを詰めて差し出す。
「困らせてごめん。でも、玲奈ちゃんから、旦那さんへの大好きオーラが溢れているんだもん。旦那さんとこれを食べながら、今後のことを相談してみなさいよ」
「だから、旦那さんじゃ……」
訂正しようとする玲奈の言葉を、渚沙は「わかった、わかった」と聞き流してブラウニーの入った袋を握らせた。
日曜日、バイト先であるカフェ・クレールでテーブルの片付けをしていた玲奈は、客が開きっぱなしにしで帰った雑誌を閉じようとして手を止めた。
観光地を紹介しているそのページには、煌めく水面や、緑豊かな場所で虹色の垂れ幕がはためく景色などが掲載されている。
その他にも、美しい景色を眼下に楽しめるガーデンテラスの写真などもある。
記事を読むと、お盆休みに向けて、滋賀にある琵琶湖周辺の観光スポットを特集しているようだ。
写真映えしそうな観光スポットの他、アクティビティやグルメなども紹介されている。
「綺麗な場所、こんな場所に悠眞さんと一緒に行けたら……」
素敵な景色を目にして、彼と肩を並べて歩く自分の姿を想像した直後ハッとする。
(いくら仲良く暮らしているからって、悠眞さんと私は、恋人でもなんでもないのに)
フルフルと首を振って雑念を追い払った玲奈は、仕事に集中することにした。
そうやっていつも以上に忙しく立ち働いていた玲奈が、勤務時間を終えて帰り支度をしていると、オーナーの妻である早川渚沙が声をかけてきた。
「玲奈ちゃん、これ余りそうだから持って帰る?」
「なんですか?」
持って帰るかと確認しつつも、差し出されたそれは、すでに紙袋に入れられている。
「ほうれん草とベーコンのキッシュよ」
渚沙の言葉に、玲奈は表情を綻ばせた。
「ありがとうございます。悠眞さんちょうど今日帰ってくるから喜びます」
クレールのオーナーで、渚沙の夫でもある早川遥歩は、本場フランスで修行した経験を持つ料理人だ。
本場のフランス料理といっても、格式ばったフレンチレストランではなく、地域に根付いたアットホームな店での修行だったとのことで、この店で出す料理も素朴な味わいのもが多い。
そしてそのどれも美味しくて、玲奈の様子を見にお店を訪れた悠眞も、すっかりこのお店のファンになっている。
その中でも、ほうれん草のキッシュは特にお気に入りだ。
悠眞のことを思って玲奈がうれしそうにしていると、渚沙がニンマリする。
「玲奈ちゃん、旦那さんのこと本当に好きよね」
「そ、そんなことは。……それに、まだ旦那さんではないです」
玲奈が慌てると、渚沙が微笑ましげな眼差しを向けてくるので、なんだか余計に恥ずかしい。
「そんな照れなくてもいいじゃない。玲奈ちゃんの反応見ていれば悠眞さんのこと大好きなのはわかるから、さっさと結婚しちゃえばいいのに」
契約結婚に向けたお試し同棲中というのは色々ややこしいので、渚沙たちには、悠眞との関係は、結婚を考えている同棲中のパートナーと説明してある。
だから渚沙たちは、玲奈と悠眞の間に恋愛感情がなんて思ってもいない。
「そういうのは、悠眞さんの都合もあるから、私一人の気持ちだけじゃ決められないです」
玲奈が言葉を濁すと、渚沙がすかさず目を輝かせる。
「てことは、玲奈ちゃんの気持ちは決まっているってことね」
思わず赤面して黙り込む玲奈を見て、揶揄いすぎたと思ったのか渚沙はクスクス笑いながら、準備していたのとは別の袋にブラウニーを詰めて差し出す。
「困らせてごめん。でも、玲奈ちゃんから、旦那さんへの大好きオーラが溢れているんだもん。旦那さんとこれを食べながら、今後のことを相談してみなさいよ」
「だから、旦那さんじゃ……」
訂正しようとする玲奈の言葉を、渚沙は「わかった、わかった」と聞き流してブラウニーの入った袋を握らせた。