蒼穹の覇者は、激愛で契約妻と秘密の我が子を逃がさない
◇◇◇
二月、クレールで休憩時間にスマホのメッセージを確認した玲奈は、そっと息を吐いた。
「どうかした?」
ちょうどバックヤードに紙ナプキンをとりに来ていた渚沙が目ざとく反応する。
「たいしたことじゃないんです。悠眞さんが、今日出張から帰ってくる予定だったんですけど、トラブルがあって帰りは数日先になるそうです」
「旦那さん、もうパイロットを辞めたんじゃないの?」
渚沙の言葉に玲奈は頷く。
「はい。でもその分、鷹翔グループの新規プロジェクトの立ち上げが忙しいみたいで、出張ばかりです」
それでも今回の出張先は京都で、いざとなれば日帰りできる距離だ。
彼が国際線を飛んでいた頃は、国境をまたぐだけに、急な予定変更にも諦めがついたのに、それが今は難しい。
(しかも今日は……)
「せっかくのバレンタインデーなのに、残念ね。玲奈ちゃん、気合い入れて、手作りチョコの用意をしていたのに」
玲奈の心を読んだような渚沙の言葉に、玲奈は肩をすくめた。
「悠眞さんは忙しいから、仕方ないです。それに数日後には、帰ってこられるみたいなので、新しいものを作って渡します」
これまで恋をしたこともなかった玲奈にとって、好きな男性にバレンタインデーのプレゼントを渡すなんて初めての体験だ。
それでかなり気合いを入れていたので、突然の予定変更に落胆を隠せない。
とはいえ忙しい彼に自分の気持ちを押し付けちゃいけないと、玲奈は自分に言い聞かせる。
「そうやって、なんでも我慢するの、玲奈ちゃんのよくないところだよ。嫌いな女子にならともかく、鷹條さんだって好きな子にはもっとワガママ言ってほしいんじゃないかしら」
スマホ画面に視線を落としてシュンとする玲奈に、渚沙が言う。
「まさか。ただでさえ悠眞さんは、忙しい時でも、必ず私を気遣ってくれているのに、そんなワガママを言ったら困らせてしまうだけです」
玲奈の意見に渚沙はわかってないと指を振る。
「あんまり聞き分けがいいと、彼に浮気されるわよ」
「浮気っ!」
かなり飛躍している意見に、玲奈は驚いてスマホを胸に抱きしめた。
「男ってそういうものよ。安心させると、よそ見する生き物なの。たまには『今日帰って来ないなら別れてやる』とか、ワガママ言って、困らせておきなさいよ」
渚沙が訳知り顔でそんなことを話した時、店内に客が入ってくる気配がした。
紙ナプキンの詰まった袋を棚から下ろした渚沙は、「それに男は、好きな子にはワガママを言ってほしいものなのよ」なんて言って、バックヤードを出て行く。
なんだか恋愛上級者の発言だ。
「悠眞さんが、ワガママを言ってほしい」
自分の意見を押し付けることで、忙しい人を困らせてはいけない。
そう思う反面、以前、悠眞に『もっと玲奈の希望を言葉にしてほしい』と、言われたことを思い出す。そうでないと、不安になるとも。
(悠眞さんに安心してもらうためにも、正直な気持ちを伝えるくらいはいいのかもしれない)
玲奈はスマホを操作して【バレンタインデーのお菓子を準備していたから、当日にチョコを渡せないのは残念です。でも、お仕事頑張ってください】と、書いてメッセージを送信した。
メッセージと一緒に、可愛いスタンプも送っておく。
二月、クレールで休憩時間にスマホのメッセージを確認した玲奈は、そっと息を吐いた。
「どうかした?」
ちょうどバックヤードに紙ナプキンをとりに来ていた渚沙が目ざとく反応する。
「たいしたことじゃないんです。悠眞さんが、今日出張から帰ってくる予定だったんですけど、トラブルがあって帰りは数日先になるそうです」
「旦那さん、もうパイロットを辞めたんじゃないの?」
渚沙の言葉に玲奈は頷く。
「はい。でもその分、鷹翔グループの新規プロジェクトの立ち上げが忙しいみたいで、出張ばかりです」
それでも今回の出張先は京都で、いざとなれば日帰りできる距離だ。
彼が国際線を飛んでいた頃は、国境をまたぐだけに、急な予定変更にも諦めがついたのに、それが今は難しい。
(しかも今日は……)
「せっかくのバレンタインデーなのに、残念ね。玲奈ちゃん、気合い入れて、手作りチョコの用意をしていたのに」
玲奈の心を読んだような渚沙の言葉に、玲奈は肩をすくめた。
「悠眞さんは忙しいから、仕方ないです。それに数日後には、帰ってこられるみたいなので、新しいものを作って渡します」
これまで恋をしたこともなかった玲奈にとって、好きな男性にバレンタインデーのプレゼントを渡すなんて初めての体験だ。
それでかなり気合いを入れていたので、突然の予定変更に落胆を隠せない。
とはいえ忙しい彼に自分の気持ちを押し付けちゃいけないと、玲奈は自分に言い聞かせる。
「そうやって、なんでも我慢するの、玲奈ちゃんのよくないところだよ。嫌いな女子にならともかく、鷹條さんだって好きな子にはもっとワガママ言ってほしいんじゃないかしら」
スマホ画面に視線を落としてシュンとする玲奈に、渚沙が言う。
「まさか。ただでさえ悠眞さんは、忙しい時でも、必ず私を気遣ってくれているのに、そんなワガママを言ったら困らせてしまうだけです」
玲奈の意見に渚沙はわかってないと指を振る。
「あんまり聞き分けがいいと、彼に浮気されるわよ」
「浮気っ!」
かなり飛躍している意見に、玲奈は驚いてスマホを胸に抱きしめた。
「男ってそういうものよ。安心させると、よそ見する生き物なの。たまには『今日帰って来ないなら別れてやる』とか、ワガママ言って、困らせておきなさいよ」
渚沙が訳知り顔でそんなことを話した時、店内に客が入ってくる気配がした。
紙ナプキンの詰まった袋を棚から下ろした渚沙は、「それに男は、好きな子にはワガママを言ってほしいものなのよ」なんて言って、バックヤードを出て行く。
なんだか恋愛上級者の発言だ。
「悠眞さんが、ワガママを言ってほしい」
自分の意見を押し付けることで、忙しい人を困らせてはいけない。
そう思う反面、以前、悠眞に『もっと玲奈の希望を言葉にしてほしい』と、言われたことを思い出す。そうでないと、不安になるとも。
(悠眞さんに安心してもらうためにも、正直な気持ちを伝えるくらいはいいのかもしれない)
玲奈はスマホを操作して【バレンタインデーのお菓子を準備していたから、当日にチョコを渡せないのは残念です。でも、お仕事頑張ってください】と、書いてメッセージを送信した。
メッセージと一緒に、可愛いスタンプも送っておく。