蒼穹の覇者は、激愛で契約妻と秘密の我が子を逃がさない
そしていつもどおり、クレールの仕事を夕方で切り上げた玲奈は、ひとりで夕食や入浴を済ませた。
気になっていたドラマを見終えて、そろそろ寝室に行こうかと考えていると、玄関で〝ガシャン〟と硬い音が響いた。
音の感じから、誰かがこの部屋のドアを開けようとして、それを内鍵に邪魔されたのだとわかる。
「私、鍵を閉め忘れたのかな?」
帰って来た時、施錠した気になって、内鍵を掛けるだけにしてしまったのかもしれない。
このマンションはセキュリティが高く、部外者は簡単に侵入できない構造になっているという安心感から、そんな失敗を過去にもしたことがある。
外部からの侵入には厳しいが、一度入り込まれてしまうと内側のセキュリティが甘いというのはよく聞く話だ。
前にニュースで宅配業者を装って正面エントランスのセキュリティをかいくぐった泥棒がマンショの内の施錠されていない家に入り込んで犯行に及んでいたという話を聞いたことがある。
内鍵を締めてあったのでよかったけど、危うく自分も同じ被害に遭うところだったのかもしれない。
(ど、どうしよう。悠眞さんに電話……じゃなくて、警察に)
恐怖でパニックを起こして、身動きでずにいる玲奈の耳に、微かに聞きなれた声が届く。
「玲奈、開けてくれないか」
「悠眞さん?」
玲奈は目を丸くする。
だって彼は今、京都にいるはず。それでも、再度玄関の方から聞こえてくる声は、確かに悠眞のものだ。
「まさか……」
半信半疑で玄関に駆けていくと、内鍵に邪魔をされて、少ししか開かないドアの隙間から悠眞の顔が見えた。
「どうしてここに? ちょっと待ってください」
一度ドアを閉めた玲奈は、内鍵を外して再びドアを開けた。
「ただいま」
悠眞は、待ちかねていたとでも言いたげな態度で、玄関先に立つ玲奈を抱きしめた。
玲奈を包み込む悠眞のコートは、夜気を含んでヒンヤリとしている。彼の腕の中で深呼吸をすると、冬のにおいがした。
「えっと、お帰りなさい。……ていうか悠眞さん、仕事はどうしたんですか? 今日は、京都に泊まる予定じゃ?」
「仕事はまだ残っているが、明日の朝九時までに戻ればいい。明日の始発に乗れば間に合う」
「そんな慌ただしい中、どうして?」
目を丸くする玲奈に、悠眞は「玲奈のバレンタインデーチョコを食べるためだ」と、答える。
「そ、そんな理由で……」
「そんな理由じゃないだろ。玲奈が俺のためにバレンタインデーのチョコを用意をしてくれて、それを渡せないことを残念に思ってくれている。そう言われたら、戻ってくるしかないだろ」
悠眞の言葉に、昼間、彼に送ったメッセージを思い出して後悔する。
「ごめんなさい。あのメッセージは、そんなつもりじゃなかったんです」
「わかってる。だけど玲奈が俺に会えないことを、残念に思ってくれたんだ。許される距離にいるなら、戻ってくるさ」
さすがに国境をまたぐと、難しくなるが……と、悠眞は冗談めかして笑う。
玲奈は、そんな彼にギュッと抱きついた。
悠眞に無理をさせたいわけじゃないけど、彼が自分のために行動を起こしてくれたことがうれしい。
玲奈が彼に抱きつくと、悠眞からも玲奈の背中に腕を回してその抱擁を受け止めてくれた。
その姿勢で息を吸うと、悠眞のコートから、冬の夜の香りがした。
「お帰りなさい。今日のうちにチョコを渡せてうれしいです」
あれこれ難しく考えるのをやめて、玲奈は正直な思いを伝える。
「こちらこそ、玲奈の希望を叶えさせてくれてありがとう。これからも、思ったことはちゃんと声にしてくれ、そうしたら俺がそれを叶えていくから」
悠眞のうれしそうな顔を見れば、それが正解なんだってわかる。
「はい。そうします」
玲奈は素直に悠眞に誓う。
日付が変わるまで、あと一時間もない。明日、始発で戻るというのであれば、悠眞の滞在時間は限られる。
早く休んでもらったほうがいいのだろうけど、今はふたりの幸せな時間を味わいたい。
なによりも、悠眞が同じ思いでいてくれていることがうれしい。
だからふたりでバレンタインデーのスイーツを楽しんだ後は、濃密な恋人同士の時間を過ごした。
一緒に過ごせる時間が少ないからこそ、情熱を凝縮させたような濃厚なひとときをすごした。
翌朝、まだ暗いうちに家を出て行く悠眞を見送る玲奈は、体に彼と過ごした情熱的な時間の余韻が残っているのを感じてなんだか気恥ずかしかったのだけど。
気になっていたドラマを見終えて、そろそろ寝室に行こうかと考えていると、玄関で〝ガシャン〟と硬い音が響いた。
音の感じから、誰かがこの部屋のドアを開けようとして、それを内鍵に邪魔されたのだとわかる。
「私、鍵を閉め忘れたのかな?」
帰って来た時、施錠した気になって、内鍵を掛けるだけにしてしまったのかもしれない。
このマンションはセキュリティが高く、部外者は簡単に侵入できない構造になっているという安心感から、そんな失敗を過去にもしたことがある。
外部からの侵入には厳しいが、一度入り込まれてしまうと内側のセキュリティが甘いというのはよく聞く話だ。
前にニュースで宅配業者を装って正面エントランスのセキュリティをかいくぐった泥棒がマンショの内の施錠されていない家に入り込んで犯行に及んでいたという話を聞いたことがある。
内鍵を締めてあったのでよかったけど、危うく自分も同じ被害に遭うところだったのかもしれない。
(ど、どうしよう。悠眞さんに電話……じゃなくて、警察に)
恐怖でパニックを起こして、身動きでずにいる玲奈の耳に、微かに聞きなれた声が届く。
「玲奈、開けてくれないか」
「悠眞さん?」
玲奈は目を丸くする。
だって彼は今、京都にいるはず。それでも、再度玄関の方から聞こえてくる声は、確かに悠眞のものだ。
「まさか……」
半信半疑で玄関に駆けていくと、内鍵に邪魔をされて、少ししか開かないドアの隙間から悠眞の顔が見えた。
「どうしてここに? ちょっと待ってください」
一度ドアを閉めた玲奈は、内鍵を外して再びドアを開けた。
「ただいま」
悠眞は、待ちかねていたとでも言いたげな態度で、玄関先に立つ玲奈を抱きしめた。
玲奈を包み込む悠眞のコートは、夜気を含んでヒンヤリとしている。彼の腕の中で深呼吸をすると、冬のにおいがした。
「えっと、お帰りなさい。……ていうか悠眞さん、仕事はどうしたんですか? 今日は、京都に泊まる予定じゃ?」
「仕事はまだ残っているが、明日の朝九時までに戻ればいい。明日の始発に乗れば間に合う」
「そんな慌ただしい中、どうして?」
目を丸くする玲奈に、悠眞は「玲奈のバレンタインデーチョコを食べるためだ」と、答える。
「そ、そんな理由で……」
「そんな理由じゃないだろ。玲奈が俺のためにバレンタインデーのチョコを用意をしてくれて、それを渡せないことを残念に思ってくれている。そう言われたら、戻ってくるしかないだろ」
悠眞の言葉に、昼間、彼に送ったメッセージを思い出して後悔する。
「ごめんなさい。あのメッセージは、そんなつもりじゃなかったんです」
「わかってる。だけど玲奈が俺に会えないことを、残念に思ってくれたんだ。許される距離にいるなら、戻ってくるさ」
さすがに国境をまたぐと、難しくなるが……と、悠眞は冗談めかして笑う。
玲奈は、そんな彼にギュッと抱きついた。
悠眞に無理をさせたいわけじゃないけど、彼が自分のために行動を起こしてくれたことがうれしい。
玲奈が彼に抱きつくと、悠眞からも玲奈の背中に腕を回してその抱擁を受け止めてくれた。
その姿勢で息を吸うと、悠眞のコートから、冬の夜の香りがした。
「お帰りなさい。今日のうちにチョコを渡せてうれしいです」
あれこれ難しく考えるのをやめて、玲奈は正直な思いを伝える。
「こちらこそ、玲奈の希望を叶えさせてくれてありがとう。これからも、思ったことはちゃんと声にしてくれ、そうしたら俺がそれを叶えていくから」
悠眞のうれしそうな顔を見れば、それが正解なんだってわかる。
「はい。そうします」
玲奈は素直に悠眞に誓う。
日付が変わるまで、あと一時間もない。明日、始発で戻るというのであれば、悠眞の滞在時間は限られる。
早く休んでもらったほうがいいのだろうけど、今はふたりの幸せな時間を味わいたい。
なによりも、悠眞が同じ思いでいてくれていることがうれしい。
だからふたりでバレンタインデーのスイーツを楽しんだ後は、濃密な恋人同士の時間を過ごした。
一緒に過ごせる時間が少ないからこそ、情熱を凝縮させたような濃厚なひとときをすごした。
翌朝、まだ暗いうちに家を出て行く悠眞を見送る玲奈は、体に彼と過ごした情熱的な時間の余韻が残っているのを感じてなんだか気恥ずかしかったのだけど。