蒼穹の覇者は、激愛で契約妻と秘密の我が子を逃がさない
 あれこれ思うところはあるけど、ゆっくり悩んでいる時間はない。
 時折新たに訪れる客のチェックイン手続きをしつつ、ディナーの準備もしなくてはいけない。美味しい料理はバウムクローネのウリで、それを目当てにして何度も訪れるお客様も多い。
 お昼寝で元気を取り戻した双子を気にかけつつ、玲奈はその手伝いをしていく。
 こういう時、双子はふたりで退屈せずに遊んでくれるのでありがたい。
 ディナーの時間が迫ってきた今も、ロビーのキッズコーナーで、時折時々子供好きなお客さんに声をかけてもらいながら仲良く遊んでいる。

「あっ」

 梢に頼まれて裏の倉庫までオリーブオイルの瓶を取りにいっていた玲奈は、厨房に戻ろうとして、鈴桜のうれしそうな声に足を止めた。
 見ると、二階から下りようとしていた悠眞が、子供たちの存在に気付いて踊り場で足を止めている。
 キッズコーナーは階段の向かいに設置されていて、階段を下りてくる時にいやでも目に入る。
 そのまま一階に下りてきた悠眞は、オリーブオイルの瓶を抱える玲奈にチラリと目をやって、「子供に、話しかけても?」と、聞く。
 他のお客さんもよく相手してくれている。
 悠眞を他のお客さんと同じように扱うというのであれば、それを断るのは不自然だ。
 それに悠眞の性格を考えれば、勝手に子供たちに自分の素性を語ったりしないだろう。

「どうぞ」

(悠眞さんはただのお客様なんだし、双子だって、ここで私が断ったら変に思うよね)

 玲奈はそう自分を納得させて、厨房に戻っていく。
 ちらりと視線を向けると、キッズコーナーを囲むカラフルな立方体のクッションをベンチ代わりにして悠眞が腰を下ろすのが見えた。
 先に来て双子に声をかけていたふたりの女性が、悠眞のイケメンぶりに気付いて色めきだっているのがわかった。
 だけど悠眞はそんなことおかまいなしといった感じで、話しかけてきた鈴桜(りお)の相手をしている。
 昨日のことを覚えている優聖(ゆうせい)は、警戒心を露わにして悠眞と距離を取り、ついでに鈴桜の服を引っぱって彼から離れるよう合図している。
 だけどそれくらいでは、好奇心旺盛な鈴桜の動きは止まらない。
 ご機嫌にあれこれ話しかけている。

「じき食事の時間になりますので、少しお待ちください」

 その場にいる面々に声をかけて、玲奈はその場を離れた。
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