そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




遠くで草を踏む音が近づいてくるのがわかる。


……浴衣だと、思うように動けない。

もう、迷ってる場合じゃない。


私は、裾を掴んで。


びり、と。


布を裂いた。


冷たい空気が、剥き出しになった肌を撫でる。



「……お前、時々思い切りいいよな」



その一瞬、蓮が目を逸らしたのが、視界の端に映る。

……ほんと、変なとこ律儀なんだら。



「あとで買取しなきゃ」



わざと、軽い調子で言ってみせる。

レンタルだったこの浴衣は、あとで Aegis(イージス)経由で経費で落としてもらおう。

これは、不可抗力。


なんて考えていたら。


びりっ。

私よりもよっぽど豪快で躊躇いのない音が響いた。


「えっ」


思わず声が漏れる。



「これで俺も共犯」



そう言って、蓮は少しだけ悪戯っぽく笑った。

……もう、何でこんなとこできゅんとしてんの私。



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