そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「手、震えてるよ?」



——ぞくりと、見透かされたみたいな声。


……バレてる。

これじゃ、牽制にすらならない。


律も銃を構えたけど、男は全く気にしていない。

視線は、最初から最後まで——私だけ。


それに、律の位置から撃てば蓮に当たる可能性が高すぎる。

律も、目の前の男も、それが分かっている。


だから、撃てない。



「へぇ…もしかして、撃てないの?」



私に向けられたその一言が、胸の奥を正確に抉った。


わかってる。

そんなこと。


引き金に指をかけたまま、動けない自分が一番よく知ってる。


致命傷じゃなくていい。

相手の肩でも、腕でも。


一瞬、怯ませられればそれでいい。


なのに。

…引き金に、力が入らない。


このまま勢いで撃てば、少しでも照準がずれたら。


——蓮に、当たる。



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