そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~



そこにいたのは。


蓮へ向けていた銃は床に投げ捨て、

仲間であるはずの者たちを、見下ろす男。


さっきまで浮かべていた、軽薄そうな笑みはもうない。

感情が、完全に削ぎ落とされた顔。

人の温度を感じさせない、冷たい視線で。



「殺すなって、言ったよね?」



淡々とした口調。

でも、目だけが、異常に冴えている。



「お前らが桜庭を恨もうが、どう思おうが」



発砲したであろう者に一歩づつ近づいていく。



「俺は恨んでねーから殺すなって言ってんの。わかる?」



そう言われて怯えるように銃を下げた発砲した男は、何か言おうとした瞬間。



腹部に、容赦のない一撃。


身体が、地面を転がった。



「……っ、す、すみま……」

「次やったら」



しゃがみ込み、髪を掴み上げて。

目を合わせる。



「──お前ら殺すから」



声は静かで、怒鳴ってすらいない。

だからこそ、異常に怖い。


言葉もなく、頷くしかない様子だった。


……この人、ずいぶん偉い立場の人なのかもしれない。



< 265 / 303 >

この作品をシェア

pagetop