そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
「…俺、何かした?」
一瞬、時間が止まった。
それから、彩葉はゆっくり振り向いて。
「……してない」
「じゃあ、なんで」
「……」
視線が、泳ぐ。
答えを探しているのか、それとも避けているのか。
「……蓮、しつこい」
胸の奥がずきりと痛んだ。
……しつこくしなきゃ、お前は何も言わないだろ。
このまま何も言わずに距離を保ったまま生きていけるほど、俺は器用じゃない。
「…じゃあ、俺のこと嫌いになった?」
ぽつりと落とした言葉に、彩葉の目が揺れた。
否定も、肯定もしない。
その沈黙が、全部を語っている気がして。
夜、廊下ですれ違ったその時。
「待て」
俺は彩葉の手首を掴んでいた。
一瞬、驚いたように目を見開いてすぐに振り払おうとする。
このまま理由もわからず避けられるのは耐えられない。
彩葉は、こういう時妙に頑固だ。
だったら…あの時みたいに、全部吐くまで逃がす気はなかった。