そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
「……離して」
「離さねぇ」
拒否する声。
それでも、掴んだ手元が微かに震えているのがはっきり伝わってくる。
……彩葉に触れたのは、いつぶりだ。
花火大会の日以来かもしれない。
そう思った途端、余計に手を離せなくなった。
「話、終わってねぇだろ」
「話すことなんてない」
「ある」
無理矢理にでも引き止めないと、彩葉は逃げてしまう。
「お前、わざと俺に嫌われようとしてる?」
彩葉は視線を逸らした。
それが、答えみたいで。
「……部屋、戻る」
その一歩が出る前に、俺は彩葉を引き寄せた。
「ダメ」
「……っ」
抵抗しようとしているのは分かる。
でも、彩葉は本気で俺の手を振り払おうとはしなかった。
彩葉なら俺一人くらいどうとでもできる。
それでも、しない。
だから──そのまま、俺の部屋へ連れ込んだ。
入った瞬間、ドアを背中で押さえながら鍵をかける。
カチャリ、という音が響いた。
「……っ、開けて」
「開けねぇ」
「今、蓮と話したくない」
俺は彩葉と一緒に過ごしてきて、
それなりに性格も考え方も、見てきたつもりだ。
だから。
もし、俺の考えが間違っていなければ。
ここで話さないまま離れるのは、
絶対に、ダメだ。