そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




【side彩葉】




どれだけ突き放そうとしても、体は正直だった。

頭では必死に距離を取ろうとしているのに心が追いつかない。


蓮の手を本気で振り払うなんて──そんなこと、できるわけがなかった。


だからこうして私は、また蓮に捕まってしまう。


壁と蓮の体に挟まれて、逃げ場を失ったまま言葉を失った。



「……」



何も言えない。

言ってしまったら、蓮は私を止めるだろう。



私がそばにいるから。

好きになってしまったから。

私のせいで、蓮は怪我をした。


このままそばにいれば、また同じことが起きる。

そもそも、庇われるなんて…護衛として失格だ。



……だから私は、蓮の隣にいるべきじゃない。

明日私は、この家を出ていく。


それでいい。

私達は最初から出会うはずがなかったかもしれないんだから。



それでも、このまま一緒にいたら、

きっと、もっと大切になってしまう。

もしそれでまた失ったら…耐えられない。



いっそ私のことを嫌いになってくれればいい。

それで、ただの護衛の私のことなんて忘れて、蓮は幸せになってくれればいい。



そうすればきっと、私も──忘れられる。


……そう思って、突き放そうとしたのに。




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