そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
【side蓮】
目を覚ました瞬間。
布団の隣。
昨夜、確かにあったはずの温もりが、もう冷えていた。
カーテン越しの光は昨日と同じなのに。
部屋の空気だけが、決定的に違う。
「……彩葉?」
……いや。
ただの早起きだろ。
そう言い聞かせて、体を起こす。
でも。
廊下、キッチン、リビング。
靴箱には靴がない。
どこにも、いない。
勘違いであって欲しいと思いながら、
彩葉の部屋のドアを開けて、ようやく理解してしまった。
「……は?」
昨日の夜。
彩葉は、確かに笑ってた。
……引き留められたかもしれない。
一瞬、そんな希望が胸をよぎっていた。
でも。
彩葉に割り当てられていたはずの部屋は空っぽで。
ベッドも、机も、クローゼットも。
生活していた痕跡がきれいに消えている。
まるで──最初から、ここにいなかったみたいに。
「……ふざけんなよ」
それからの時間は、正直あまり覚えていない。
怪我の療養って名目で家にいるはずなのに。
何をしても落ち着かない。彩葉がいない。
近づいたら避けられて、
それでも最後はあんなふうに甘えてきて。
……なんだったんだよ。
全部、一人で決めるんじゃねぇよ。