そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
【side彩葉】
「……世話になったな」
落ち着いた声。
相変わらず、創さんの話し方は感情は読めない。
玄関の扉の前、私は一歩下がって、深く頭を下げた。
背筋を伸ばしているつもりなのにどこか力が入らない。
ちゃんと、立っているはずなのに。
「いえ……こちらこそ」
「本当に行っちゃうの……?」
梓さんの声は、少しだけ悲しそうで。
まるで、こんな私を引き止めようとしてくれているんじゃないかって勘違いしてしまいそうになる。
そんな資格私にはないのに。
それから、ゆっくり顔を上げる。
「……私は、蓮のそばにいるべきではありません」
これは、私の過ちだ。
護衛という立場で、
守るべき対象に、個人的な感情を持ち込んだ。
「蓮は私を庇って怪我をしました。それは……護衛として、失格です」
全部、最初に戻るだけ。
「そばにいれば、また狙われる可能性があります。」
創さんは、すぐには何も言わなかった。
ただ一度、ゆっくりと息を吐く。
──創さんは、最初から言っていた。
「友達以上の関係になるな」
「情が絡めば、護衛は成り立たない」
その通りだった。
そして私は、見事にその線を越えて。
結果、蓮は私を守り、怪我をした。
……創さんの言葉は、全部、正しかった。