そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
少し伸びた前髪、変わらない背の高さ、包帯の外れた腕。
ちゃんと、元気そうで。
でも。
その隣に、知らない人がいた。
──ロングヘアで、肩より下まで伸びた艶のある黒髪。
線が細くて、顔立ちも整っていて。
……女の人…?
それに2人は距離が近いように見える。
相手が何か言ったのか、蓮が口元を緩めた。
…笑っていた。
私がいなくても、当たり前みたいに。
楽しそうに。
胸の奥が、ぎゅっと音を立てて潰れる。
それを願っていたはずだった。
私がいなくても、蓮が笑っていられる未来を。
それが一番だと、何度も何度も自分に言い聞かせてきたのに。
いざ、目の前で見てしまうと。
……けっこう、心に来る。
あんなに覚悟を決めてきたのに。
自分で選んだ道なのに。
どうして、こんなに息が苦しいんだろう。
視界がじわりと滲んで、慌てて目を伏せた。
…もう、見たくない。
踵を返して、早足でその場を離れた。
振り返らなかった。
振り返れなかった。
もし、また蓮が笑っていたら。
それを見てしまったら。
………私、サイテーだ…。