そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~
なのに。
蓮の怪我のことを聞いた時も、あの娘が頭を下げた時も。
震えもせず、泣きもしないあの顔を見た時も。
俺は、「護衛をやめろ」なんて言えなかった。
彩葉は自分自身で判断した。
依頼を受けた身として、プロとして。
あの子は、功績トップなだけある。
名指しで依頼したこと。
それ自体は、間違いじゃなかった。
今でもそう思っている。
「蓮、きっと怒るわね…」
それだけ言って、梓は視線を伏せる。
……守るべきもの。
息子の命か、心か。
その両方を守る選択ができなかった自分を
俺は、父親として失格だと思っている。
俺が彩葉を引き止めれば、あの子はきっと残ってくれただろう。
もし、彩葉が戻ってきたら。
もし、もう一度蓮の隣に立つ覚悟を持って戻ってきたら。
その時の俺は、もう一度、同じことを言えるだろうか。
「友達以上になるな」と。
俺はゆっくりと、玄関に背を向けた。