そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~



また、律なの。


……だめ。

今、顔を見たら。



「っ……」



言葉より先に、涙が落ちた。


一粒、ぽとりと。


それを合図にしたみたいに、次から次へと溢れてくる。



「……えっ、ちょ、」



律が慌てて私の前に回り込む。



「泣いてる……?」



自分でも分かる。

かなりひどい顔をしてる。


ここはロビーで、人の目もあるのに。

それなのに。


律の顔を見た瞬間、

張りつめていた何かが一気に緩んでしまって、抑えられなかった。



「ごめん、なんでもない、から」



逃げるように踵を返そうとした、その時。

律の手が、私の手首を掴んだ。



「何でもないわけないでしょ。…いい加減、弱音吐いてもいいんじゃない」



そう言って、有無を言わせずそのまま律の部屋へ連れて行かれた。




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