そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~



扉が閉まって外の空気が遮断されて、張り詰めていたものがぷつりと切れたみたいに足から力が抜けてよろめく。


ふらっと前に倒れそうになった身体を、律が受け止めた。

そのまま、そっと腕を回される。


律は、何も問い詰めてこない。



代わりに、ゆっくりと私の背中を叩く。

ぽん、ぽん、と。

規則正しいリズム。

まるで、呼吸を教えるみたいに。


そのまま頭に大きな手が触れて。

子どもを宥めるみたいに、ゆっくり撫でられる。


いつもなら、子供扱いしないでって言うのに、

今はそんな軽口を叩く余裕なんてなくて。



「彩葉はさ、頑張りすぎだよ」



律の声が、優しすぎて。

その一言で。


堰を切ったみたいに、涙が止まらなくなった。



「……全部一人で抱え込んで、誰にも頼らないで。それで壊れそうになってからやっと泣く」



蓮に会いたい気持ちと。

女の人と笑い歩いていた姿を見てしまったショックと。

そんなことを考えてしまった自分への嫌悪と。

あの時、私がちゃんと撃てていればこんなことにならなかったんじゃないか、という後悔と。

ずっと、過去に囚われている自分と。

それでも、こんな私に変わらず優しくしてくれる律へのどうしようもない申し訳なさと。


全部が絡まって、胸の中でぐちゃぐちゃになって。


もう、わけがわからなかった。




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