そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~



「……っ、」



声を殺して泣こうとしても、無理だった。


代わりに、律の服をぎゅっと掴んでしまって。


今さら、それに気づいて。

でも、離せなくて。



「……いいよ」



律は、全部受け入れてくれる。

ただ、私の背中に手を置いてゆっくり落ち着かせるように撫でてくる。



私、律に優しくされる資格なんて、ないのに。

私はあのとき、律を拒否したのに…。


それから、私の背中に回していた手をゆっくり下ろして。

今度は、ぎゅっと抱き直してきた。



「…知ってる?ハグってストレス解消に良いんだよ」



そんなこと、知ってる。


だって、こうして抱きしめられているとどうしようもなく安心してしまうから。



「しんどい時は、しんどいって言えばいい。全部受け止めるし」



全部、吐き出してしまいたくなる。


怖かったことも、苦しかったことも

誰にも言えなかった本音も。


でも、それって。


こんな、律に縋るなんて…あまりにも、都合が良すぎる。



「………それとも、全部忘れさせてあげようか?」



少しだけ間をおいて、律が静かに言った。




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