鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「驚いた。あんなに部長を恐れてた牧野ちゃんが、そんなこと言うなんて。いつも愚痴ばかりだったのに」

 掘り返されたくないところを掘り返されて、ばつが悪くなる。

「そ、それは言わないでくださいよ。だって、本当に怖かったんだから、しかたないじゃないですか……」
「まあね。それは認める。でも、今は怖いだけじゃないんでしょ?」

 静かに、でも、はっきりと頷く。

「本当は優しくて、誠実な人だなって思ってます」
「それはまた真逆の評価だね」

 自分でもそう思う。だが、そうなったのは梢のせいではなくて、孝仁のせいだ。第一印象から孝仁に好印象を抱く人はそうそういないはず。評価ががらりと変わるのもしかたのないことだ。

「わかりにくいんですよ、あの人は。いっつも無表情で、厳しいことばかり言って。そんなの、表面にある恐ろしさしか伝わってこないに決まってるじゃないですか」

 梢がどれだけ孝仁に怯えていたかを知っているからだろう。篠田はくすっと笑いをこぼしている。

「でも、牧野ちゃんは部長の内側にある優しさに気づいたわけだ」
「少しずつですよ。でも、ちゃんと私のためになることを言ってくれてるって、今ならわかるので、私もそれに応えたいなって思ってます。だから、今度のコンテストも、部長を落胆させないように頑張るつもりです」
「そっか」

 梢の強い意志を感じ取ってくれたからだろうか。篠田は優しく微笑んでいる。けれど、一瞬だけ眉根を寄せて複雑な表情を浮かべたかと思うと、なにかを決意したように小さく息を吐いてから、梢の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。
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