鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「ねえ、違ってたらごめんね。牧野ちゃんはさ、部長のこと、恋愛的な意味で好きなんじゃない?」
「っ、それは……」

 言葉に詰まって、なにも答えられない。なぜなら篠田の問いは、自問し続けているものと同じなのだ。

 孝仁に惹かれてしまっていることは事実。けれど、相手はあの鬼上司だ。そう簡単に己の気持ちを認めていいものか、いつも不安になる。

「ごめん、ごめん。そんなこと答えたくないよね。今のは忘れて」
「あっ、違います。そうじゃないんです。ただ、戸惑ってるというか……」

 どう言語化したら伝わるかがわからず、曖昧な表現で濁してしまう。それがまさに梢の心中を表しているが、それを察してほしいというのは無理がある。

 梢が改めて己の気持ちと向き合い、正解の言葉を探る中、篠田は急かすことなく、黙って続きを待っていてくれた。

「……たぶん、好き、なんだと思います。いや……確実に好きですね。うん、好き。じゃないと、このドキドキを証明できない。でも、少し前までそういう対象じゃなかったから、自分でも変化に戸惑っていて。心が追いついてない感じなんです」
「ああ、そういうこと。確かにそうなるのも無理はないか。あの鬼上司だもんね」
「ふふっ、ですね。最初は恐怖の対象でしたから。でも、今は部長のこと、すごくいいなって思ってます」

 言葉にしてみると、不思議と今の気持ちがスーッと心に馴染んでいく。孝仁のことが本当に好きなのだと。

 騒がしく感じていたドキドキも、今は心地いいときめきだと思える。
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