鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
 ときめき、戸惑い、不安、そして、切なさ。孝仁を意識し、彼ばかりを見つめていた日々は、視線を逸らし続ける日々へと変わってしまった。孝仁を意識していることに変わりはないが、気分は真逆。少し前までときめきで胸を疼かせていたのに、今は切なさで胸を痛めている。

 大人の恋、それも社内恋愛というのは非常に厄介だ。恋が上手くいかないと、仕事も上手くいかなくなるものらしい。梢は入社して以来の絶不調に、大きく頭を悩ませている。

「あっ! 嘘……参照データが全部ずれてる。はあ、最初からやり直しだ……」

 作成中だった資料のミスに気づき、深く落胆する。

(またやらかしちゃった……もうこれで何度目? 仕事に影響を及ぼすとか最悪だよ)

 一体、どれだけミスを重ねれば済むのか。孝仁の婚約の噂を知って以来、梢は毎日のようになにかしらのミスをしている。

 社会人として、公私は分けなければと、仕事は頑張っているつもりだが、結果がまったく伴っていない。心の不調が仕事にまで現れてしまっている。

 梢はさらにミスを重ねないよう、慎重に資料を作り直した。

「ふうー、よしっ! 気晴らしに、備品補充でもしてこよう」

 このまま座って作業を続けていても、きっと気が滅入る。一度、体を動かせばリフレッシュできるだろうと梢は席を立った。
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