鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「牧野、ここ最近の君は様子が変だ。仕事は頑張っているようだが、空回りしているように見える」
「すみません……」
「謝罪が聞きたいわけではない。なにか悩みを抱えているんだろ? 今日は顔色も悪い。なにか難しい問題に直面しているんじゃないか?」

 なぜだろう。叱責されるよりも、よほど苦しい。孝仁の瞳には怒りや失望といった色はなく、ただ心配の色だけが浮かんでいる。

(ああ、こんなに心配をかけて……なにやってるんだろう)

 失恋しかけているくらいで、上司に心配をかけるとはあまりにも情けない。ほとほと自分に嫌気が差す。

 けれど、心配をしてもらえることが嬉しいとも思ってしまって、そんな自分が余計に嫌になる。

「ご心配をおかけして、申し訳ありません……仰る通り空回りはしていますが、問題を抱えているわけではありません。少し悲しいというか、切ないことがあって、気落ちしてるだけなんです。すみません、こんなことで……」
「悲しいこと……ご家族やご友人になにかあったか?」

 曖昧な言い方をしたせいであらぬ誤解を与えてしまったようだ。

「いえ、違います! 家族も友人も、みんな元気です。その……とても個人的なことで悲しいことがあったと言いますか。自分の気持ちの問題なので、部長に心配していただくようなことはなにもありません。今日からはちゃんと気持ちを切り替えるので、大丈夫です」
「切り替えられないから、こうなっているんだろう」
「うっ……」

 反論の余地がない。今日までずっと引きずっているのだ。ここで宣言したからといって、切り替えられるはずがない。
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