鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「はあ、君が訊いてどうする。私が訊いているんだ。なぜうさぎのことを知っている?」

 答えるまで逃さないつもりなのだろう。孝仁からの視線が少しも外れない。

 できることなら適当に誤魔化してこの場を退散したいが、孝仁がドアの前に立っているから、逃げようにも逃げられない。

 こうなっては腹を括るしかあるまい。

「……見てしまったからです」
「どこでだ?」
「……部長の家です」
「いつ?」
「……飲み会の後です」

 なんだか変だ。誘導尋問にしては回りくどい気がする。普段の孝仁ならもっと鋭く追い詰めてくるはずだ。こちらの答え方が悪いせいかもしれないが、それにしても孝仁らしくない。

 奇妙な違和感を覚えた梢の脳内に、ふと一つの仮説が浮かび上がる。

 てっきり誘導尋問だと思っていたが、その前提が間違っていたのではないだろうか。すべて純粋な質問ということはないか。もしもそうだとしたら、それは梢がとんでもない墓穴を掘ったことを意味している。

(もしかして、部長はあの日のこと覚えてない……? 私、やらかしちゃった……? ど、どうしよう! 今から誤魔化す? でも、どうやって?)

 ここから助かる道はどれなのかと梢が心の内で慌てふためく中、ついに、仮説を肯定するような質問が孝仁の口から飛び出した。
< 40 / 118 >

この作品をシェア

pagetop